実家のナチュラルビンテージ

母が2回目のコロナワクチンを打つので、先週末から今週初めまで実家に帰っていました。ワクチンを打った人の中にまれに強い副反応が出るとのことなので、一人暮らしの母が体調が悪くなった時に備えてのことです。幸い、打った部分に痛みが数日残っただけだったので、庭の草抜きなど家事を手伝っただけで終わりましたが。

ところで実家に帰ると母は必ず「何か欲しいものがあったら持って帰って」と言い、私は棚や扉を一つ一つ開けて(呆れる程物入れが多い)掘り出し物を探すのですが、今回見つけたのはこのソース入れ。

裏を見るとノリタケのものでした。このバックスタンプはプリントではなく手描きのように見えます(はっきり分かりませんが)。ネットで調べると1933年から使われていたバックスタンプとあり、そんなに古いものと思わなかったので驚きました。

母によると、確かに母が生まれる前から祖父母の家にあり、戦争の時には祖父が地面に埋めて守ったとか。当時はまだ洋食器を使う家庭は多くはなかったのでしょうから、おそらく輸出用に作られたのでしょう。これが戦後、アメリカの占領下にある時期には同じバックスタンプに「Japan」に代わり「Occupied Japan(占領下日本)」と書かれるようになります。切ない。

もちろん、そもそもはディナーセット一式揃っていたはずなのに、探してもこれ以外見当たりません。どこに行ってしまったのか、実家からそのうち出てくるのか、それとも祖父母宅に残っていて阪神大震災で失われてしまったのか。

そして、そのついでに、以前から気になっていたものに着手しました。

デンマークのデザイナーBjørn WiinbladがドイツのRosenthal(ローゼンタール)で1959年にデザインしたRomanze(ロマンス)のコーヒーセット。

上の段にポット、クリーマー、シュガーポット、コーヒーカップ。下の段にソーサーとケーキプレートがあります。

母の記憶によると60年くらい前に祖父がドイツ出張の時にドイツから送ってきたものです。当時は今のような便利な梱包材などなく、おがくずを詰めた木箱に入って船便で送られてきたとか。

これがもう、何十年もこの棚に入りっぱなしで汚れに汚れている。ずっと気になっていたので、これらも洗うことにしました。漂白剤を使わないとダメかなと思ったのですが、軽くお湯で流すだけでピカピカになりました。汚れはほこりが溜まっていただけだったのですね。

スマホ写真なので、分かりづらいですが、表面にエンボスでロマンチックな模様が描かれています。

祖父がドイツから送ってきたものの一つにはダンスクのガラスボウル付きチークトレイもあり、それも使わないというので何年も前に持って帰ってきて、自宅に人が集まったときに活用しています。ダンスクのガラスボウル付きトレイはデンマークで仕入れることもあり、わざわざ海を渡って仕入れているものが、実家から出て来たので奇妙な気持ちになりました。

こうやって実家で見つかる、いつの間にかビンテージになった品物を北欧食材輸入販売のアクアビットジャパンさんが「ナチュラルビンテージ」と言っていて、正式な英語ではありませんがピッタリの言い回しに、ついつい普段も使ってしまい「そう言うんですね」と感心され、慌てたことがあります。アクアビットジャパンさんもお父様が北欧と仕事をしていたので、実家からナチュラルビンテージが出てくるのだそう。

ところでアクアビットジャパンさんのお父様が北欧でちょっと空き時間に散歩して、雪の中で遭難しかけた話は面白く、いや面白いじゃ足りないな。何回聞いても笑いが止まらず腹を抱えてヒーヒー言うくらい大好きな話です。世の中がノーマルになったら、また家で食事会でも開催して、ナチュラルビンテージを並べながらその話が聞きたい。

とまあ、最近は北欧から入荷する品物が少なく、あまりネタがないので、個人的なお話でした。

おしまい。

子どものころに気に入って遊んでいた木の人形がデンマークのカイ・ボイスンの作品と知ったのは、この仕事を始めてからでした。残っていれば、これもナチュラルビンテージだったのですが、犬が噛んでボロボロになったので捨てちゃったんですよね。残念なことをしました。

【この記事をシェア】

コメントを残す

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る