国際婦人デーとデザイナーBrit.B.について

10年ほど前だったか、ベトナムの知人からの手紙の書き出しに「女性の日おめでとう」とあり、何のこっちゃとキョトンとしたことがあります。もしかして、ほとんどの日本の人は私と同じ感想を持つのではないでしょうか。
今日の3月8日は「国際婦人デー」、別名「国際女性の日」。1904年にアメリカで婦人参政権を要求したデモがきっかけとなり、1910年にデンマークで「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日として提唱されました。今は国によって政治的な温度差があり、女性の家事負担が重い”マンマ(お母さん)の国”イタリアでは男性から女性へミモザの花を贈り、女性たちはこの日は家事から解放される、女性を讃える日になっているとか。
さて、一方男女平等が進んでいる北欧では、男性から女性に花をプレゼントしたり、女性に権利についての集会が行われたりするそう(あまり詳しくは分からなかったのですが)。現在では男女平等の旗印を掲げる北欧ですが、60年代頃までは家事一般は主に女性の役割でした。スウェーデンから50年代から60年代にデザインされた、こんなイラストのキッチンタオルが入荷しました。
デザイン名は「Veckan(週)」で、曜日ごとに家事をしている女性の姿が描かれています。この写真では、火曜日のアイロン掛け、水曜日の窓拭き、木曜日の掃除、金曜日のパン作り。
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日曜日から水曜日。
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木曜日から日曜日。
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最後のピクニックシーンを見ると、この女性には夫と子供がいるようですが、家事をしているのは全て主婦である女性。現代ならさしずめ(ノルウェー夢ネット代表の青木さんの言葉を借りると)「ジェンダー的にNG」といったところです。けれども、このデザインが作られた50年代頃には、女性が全ての家事を担っているのは当然の光景だったのでしょう。
ただ、面白いことにこのデザインをしたスウェーデンのデザイナー、Brit Bredström(ブリット・ブレッドストローム/1919-1973)は、いわゆる古典的な女性の役割とは逆の人生でした。織物製品で知られるスウェーデンでのBorås(ボロース)で生まれた彼女は、テキスタイルデザイナーになりたいと夢見ていました。ところが、彼女の父親は保守的な人で、女性は事務職に就き、結婚し、子供を持つものと考えていました。
1930年代の終わり、ブリットの母親は父親に内緒で彼女をボロースのテキスタイル研究所にやります。やがてフリーランスとして独立し、スウェーデンのみならず、デンマーク、ドイツ、オーストリアなどでも彼女のデザインは作られました。
彼女は父親の保守的な考えに沿う事はなく、生涯独身で子供を持つことは有りませんでした。彼女の姪によると、当時としては早い時期から車を所有し、自分のサマーハウスを行き来するような、人生を楽しむタフな女性だったとか。
それを知ると、このテキスタイルのデザインは、主婦の毎日を描いているかのようで、実は一人暮らしの女性がタフに暮らしを楽しんでいるようにも見えてきます。
ミタ

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