色使いが魅力のPastoraaliシリーズ

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写真の魅力的な花瓶は、フィンランド、アラビアのPastoraaliです。アラビアで1947年から1984年まで所属していたEsteri Toumle(エステリ・トムラ 1920-1998)による、1960年代半ばのデコレートデザインです。
装飾デザイナーとして40年以上アラビアに所属し、150以上の作品を作ったと言われる彼女の作品の中でも、Pastoraaliは代表作の一つでしょう。
うねるように描かれた髪のラインは生命感を感じさせ、背景にも服にも隙間無く黒の線で装飾が施されています。60年代にはトムラに限らず、このような有機的なデザインが流行し、これは20世紀末のアールヌーボーの影響を受けています。

アール・ヌーボーを代表する作家、アルフォンス・ミュシャの作品にも、Pastoraaliと同じく、有機的な曲線で髪を表現した作品がいくつもあります。

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アール・ヌーボーと60年代デザインの関係については以前も書きましたので、こちらもご参考下さい。
魅惑のサイケデリックデザインの意外なルーツ

トムラは50年代頃から人物のイラストにおいて、細かな線で髪を描いていましたので、実際アール・ヌーボーをどこまで意識していたのかは分かりかねますが、60年代に現役のデザイナーとして生きていたからには、いくらかの時代の影響はあったと思います。
けれども、トムラはその表現力の素晴らしさでアール・ヌーボーとはまた異なる、独自の世界観を描き出しています。特に印象に残るのは、このPastoraaliだけでなく、KehakukkaIsokukkaなどに見られる、黒のラインの上に強烈な色をパートカラー的に使った作品です。

下の写真の、1枚目Kehakukkaで、2枚目がIsokukkaです。

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Kehakukkaは上から見たどちらかと言うと具象的なマリーゴールドの花びらの中心にくすんだ濃いオレンジが乗っています。Isokukkaも同じく具象を思わせる線画に濃淡も無く真っ赤な色がパッキリと乗せられています。
白い部分とパートカラーの部分のバランスが絶妙で、トムラの強い美意識とセンスを感じさせます。このスタイルは60年代半ばをピークに、70年代、80年代となるにつれ、徐々に見られなくなりますので、この時期だけの特徴かもしれません。

ところで、これはEsteri Toumlaの作品集「ESTERI TOMULA ARABIA 1947-1984」にある、Gunvor Olin-Grönqvistと一緒に写っている60年代に撮られた写真です。清く正しく(?)60年代デザインを身にまとっている二人ですね。

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なるほど、やはり60年代の作品に特に見られる作品群は、こんな時代の空気から生まれたのかと、分かるような写真ではないでしょうか。

ミタ

個人的に具象と抽象を組み合わせたデザインが好きで、今年(2012年)のマリメッコのKaunis Kaurisは結構ツボです。

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