魅惑のサイケデリックデザインの意外なルーツ

5月の買付で思わず頬が緩むようなプレートに出会いました。
プレートいっぱいに書かれた、何と魅力的なサイケデリック文字!
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メーカーはスウェーデン、グスタフスベリです。読みにくいのですが、文字はスウェーデン語で「Motionsloppet på cykel mälaren runt Juli 1968」。1968年7月に行われた自転車レースのノベルティのようです。下の方に可愛らしい自転車の絵も描かれていますね。
文字のあちこちに車輪のスポークを配し、全体的に楽しい自転車レースの雰囲気を盛り上げています。
ショップのオーナーさんからは「スティグ・リンドベリのデザインかも」と教えてもらったのですが、ちょっと違和感があったので、日本に帰ってから調べ直しました。
はっきりとはしなかったのですが、Sven Jonson(スヴェン・ヨンソン)デザインではないか、との説が見つかり、私もそっちの方が有力かなあと感じています。
ただ、スウェーデンのショップオーナーさんがリンドベリでは、と思ったのも無理は無く、そっくりなフォントデザインがここに。
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これは、スティグ・リンドベリがデザインしたBlå Husarシリーズのバックスタンプです。雰囲気が良く似ていますね。
Blå Husarは自転車プレートと同じ1968年から1973年の製造。いかに当時サイケデリック文字が流行っていたのかが伺えます。
蛇足ではありますが、サイケデリックデザインは、1960年代後半から1970年代前半までに流行した様式。Psychedelic(サイケデリック)とは幻覚剤のことで、LSDなどの幻覚剤を使った時に見えてくる幻想的なイメージを表したものです。
ポスターやレコードジャケットなどのグラフィックデザインの世界では、騒がしく、感情をザワザワと刺激するような表現が好まれました。文字もしかり。
ところがこのサイケデリック独特と思っていた文字は、実は19世紀末から20世紀初頭に流行したアールヌーボー様式から発想を得ていると、手元のデザイン史の本に書いてあり、膝を叩きました。
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こちらは、私物のアルフォンス・ミュシャの画集の一部です。ミュシャは当時多くのポスターデザインを手がけたアール・ヌーボーを代表するデザイナーです。なるほど確かに文字デザインがとてもよく似ている。
アール・ヌーボーはその流行した時期から「世紀末デザイン」と呼称され、それまでの伝統的な古典絵画様式に反旗を翻した芸術集団で、世紀末独特の退廃的な雰囲気を持っています。
同じく、サイケデリックもそれまでの体制や価値観に反発したヒッピームーブメントから生まれたものです。当時のデザイナーがアール・ヌーボーから影響を受けたという挿話は、大きな歴史の流れで捉えると、なかなか興味深いものですね。
ミタ
ミュシャの画集は高校生の時に購入した洋書です。当時は円も今よりずっと安かったし、洋書は現地価格の何倍もした時代(雑誌でも数千円した記憶があります)。お小遣いの月5000円の中から、清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ちで購入し、それこそ食い入るように何度も何度も眺めていた、懐かしい思い出の本です。

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