ウッラ・プロコペが1955年にデザインしたGA3ポットが再入荷しました。美しい球体のフォルムと侘び寂びを思わせるようなストイックな雰囲気で、和に合わせてもしっくりと落ち着く佇まいのこちらのポットは、日本でも大変人気のあるものです。
で、新しく入ったポットを眺めていると、どうも今在庫にあるものと雰囲気が違う。並べてじーーーと見て、数分経過。はっと気がつきました。
あれえええ?持ち手をつける穴の部分が、在庫にあるものはポットに対して横、再入荷のものは縦に付いているではないですか!
裏返して確認すると、在庫品は1950年代から60年代前半、再入荷品は1960年代後半のロゴが付いています。棚にあるArabiaのカタログを取り出してGAシリーズのページをめくると、60年代前半までのカタログのGAポットは確かに、持ち手をつける穴の部分が横、後半のカタログでは縦に付いています。
なんと、このポットは途中でモデルチェンジをしていたのですね!
更によくよくカタログ写真を見ると、初期のものと後期のものは、籐の持ち手の形も違えば、一方が持ち手の留め具が金属に対し、もう一方は同じ籐素材で最後まで巻かれて出来ています。
こちらがそのカタログ。
上のカラーが初期のモデルを掲載した最初のカタログ、下にあるモノクロが後期のモデルが掲載されている1967年のカタログです。
クリックで拡大してみてください。
マイナーモデルチェンジの理由は分かりませんが、多くの場合は「生産性」が原因でしょう。
持ち手をつける部分が横になっている初期のモデルは、平板に穴が開いている形状です。本体に接点の多いこの形ではカーブを合わせ付けるのは結構難しかったのではないでしょうか。
対して、後期のモデルはコーヒーカップの持ち手のように横から付けられているのが分かります。こちらの接点が少ない形状のほうが、付けるのも簡単で失敗によるロスも減りそうですね。
また、持ち手に関して言えば、一本の籐を端を削って薄くし、曲げて重ねている初期モデルよりも、半分に折り重ね、2本合わせるように曲げた後期モデルのほうが、生産の手間も少なそうです。
そういった意味では初期モデルのほうが、よりデザイナーの、この場合はウッラ・プロコペ、の意図を反映したデザインであった、といえるでしょう。確かに横についているほうが、この美しい球体のイメージを損なわない気がします。
初期のモデルがいつまで生産されていたものか分かりませんでしたが、60年代前半の事でしょう。GAの生産期間は1955年から1972年まで。比較的良く見るのはモデルチェンジ後のものですので、生産数も比べると少なかったのかも知れません。
ミタ
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「プロコペさんお願いしますよ。これじゃあ工場の人がやってられないって、言ってんですよ」とか。