とにかく無敵!スカッとしたいならフィンランド映画『SISU/シス 不死身の男』

雨がしとしとと降る芯まで冷えるフィンランドの朝、傘もささずにフードだけをかぶった小学生たちが舗装されていない泥道を黙々と学校まで歩いている姿を目にしたとき、国民性って環境が作るものなのだと心から思い、自然と「Sisu(シス)」の言葉が頭に浮かびました。

シスとは翻訳できないフィンランド語で、我慢強さや折れない心を表しています。時には大和魂をもじってフィンランド魂と訳されることも。フィンランドの人にシスの意味を尋ねると「例えば雪道でスタックしている車を皆が車を降りて押し、終わったら黙って自分の車に戻る感じ」と説明されました。分かるような、分からないような。

『SISU/シス 不死身の男』はそんなフィンランド魂をテーマにしたバイオレントアクション映画です。

時は第二次世界大戦末期。ナチスの侵攻により焦土と化したフィンランドを旅する老兵アアタミ・コルピと愛犬ウッコは、掘り当てた金塊を運ぶ途中でナチスの戦車隊に目をつけられ、“おたずね者”として追われる。アアタミが手にしているのはツルハシ1本だけ。それでも戦場に落ちている武器と知恵をフル活用し、ナチス戦車隊に囲まれて銃弾の雨を浴びながら地雷原を駆け抜けても、荒野で縛り首にされ窮地に陥っても、上空で戦闘機にツルハシを引っ掛け宙吊りになっても…絶対に死なない!多勢の敵を相手にアアタミはいかにして戦い、そして生き抜くのか?

https://happinet-phantom.com/sisu/

主人公のアアタミ・コルピはラップランドで金塊を掘っていただけなのに、ナチスがその金に目を付けたことで執拗に命を狙われ、仕方なく悪と戦う羽目になるという”巻き込まれ型”ヒーロー。実は彼はたった一人でソ連兵を300人殺したとされる伝説の“一人殺戮部隊”。

私はダイ・ハードを連想しましたが、実際、ヤルマリ・ヘランダー監督がイメージしたのは80年代のアクション映画だそう。ただ、ダイ・ハードのジョン・マクレーンと違うのは、アアタミは一言も言葉を発しないこと。代わりに、ナチスに捕らわれているフィンランドの女性が彼について話してくれます。

その女性たちもまた、シスの持ち主として描かれています。弱く、守られるヒロインは今や時代遅れ。武器を持ち戦う女たちです。

弱いと甘く見られていた老人や女性が実は強く、少ない武器で敵を倒すなんて、みんな大好きなパターンでしょう?しかもこの老人が強いのなんのって、はっきり言って無敵。どんなに痛めつけられても、絶対に死なないからある意味安心して観られるし、この窮地をどうやって脱するのだろうと次の展開が待ち遠しくなります。

痛々しいシーンはあるけれど、シンプルにハリウッド的なアクションを楽しみたい人にお勧め(ドイツ人の話すのは英語ですしね)。

それと、気になっている人にお知らせです。アアタミの愛犬ウッコは死にません!傷つくこともありません!その代わり大した活躍もしません、可愛いだけ!

2023年10月27日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。詳しい公開情報は下記の公式サイトをご確認下さい。

https://happinet-phantom.com/sisu/

予告編はバイオレンスアクションを強調した日本版より、犬や女性のシーンを取り入れたこっちの方が好み。日本版の予告は上記の公式サイトからどうぞ。

(2022 年/フィンランド/カラー/シネスコ/5.1ch/フィンランド語、英語/字幕翻訳:佐藤恵子/原題: SISU/91 分/R15+)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2022 FREEZING POINT OY AND IMMORTAL SISU UK LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

ところで、この映画の悪人は欧米映画ド定番のナチスドイツ。ナチスならどう悪く描いてもOKなお約束があるのだけれど、ふと確か第二次世界大戦ではフィンランドはドイツと同じ枢軸側だったのになぜフィンランド(ラップランド)がナチスによって焦土とされているのか疑問に思って調べました。

1944年、フィンランドはソ連との継続戦争に休戦協定を結び、その条件はフィンランド領内からドイツ軍を追放すること。そのためラップランドでドイツ軍とフィンランド軍との戦闘が発生し、ドイツ軍は焦土戦術を行いながら撤退したとか。この際にラップランドの多くの街は灰燼に帰したそう。

その焦土の再建にフィンランドの建築家たちが協力し、その中にアルヴァ・アアルトがいました。そのラップランドでアアルトが作った図書館に通っていたのが映画『アアルト』を作ったヴィルピ・スータリ監督。図書館で体験したあたたかな思い出が映画に生かされているとか。『アアルト』については下記のリンク先からどうぞ。

ほぼ同時期に公開される2本のフィンランド映画に不思議なつながりがあるのでした。

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