映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』アーティストの情熱が生む光

現在放送中の朝の連続テレビ小説『舞いあがれ』。今はIWAKURAよりも、舞ちゃんよりも、お兄ちゃんのメンタリティが心配。見ていない人には何の話か分からないでしょうが。

フィンランドを代表するブランドMarimekko(マリメッコ)の、それまたMarimekkoを代表するデザインUnikko(ウニッコ)を生み出したデザイナーMaija Isola(マイヤ・イソラ 1927-2001)のアーティストとしての生涯を描いたドキュメンタリー映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』が2023年3月3日から日本公開されます。

旅先からの手紙、日記、娘の証言で綴られ、彩り鮮やかなデザインが踊り出す

本作は、離れて暮らす愛する娘や家族に送った手紙と本人の日記、娘の証言、当時の様子を映すアーカイブ写真や映像が「自分語り」で綴られ、「マイヤ・イソラのファブリックは自分の人生の一部」と語る新鋭監督がアニメーション等を駆使して挑んだ意欲作。いつ、どこで、どんな想いからデザインを生み出していったのか、臨場感たっぷりに生き生きと彩り鮮やかに映し出されるデザインや絵画は、観る者の心を躍らせる。旅を愛し、世界のすべてをかたちにしてきたマイヤ・イソラというしなやかで逞しいデザイナーの人生を体感することで、今の時代を生き抜く力を貰える傑作アート・ドキュメンタリーである。

https://maija-isola.kinologue.com/

映画ではマイヤ・イソラが生まれてから戦時下の学生時代を経て、マリメッコの創業者アルミ・ラティアに見いだされ、やがてマリメッコの主力デザイナーになっていく様子が、残されたインタビュー、手記、娘のクリスティーナ・イソラの証言で描かれます。

ドキュメンタリーの合間には、アニメーションを使い生き生きと見せてくれるマイヤの作品に目を奪われます。映画の冒頭で描いてる手が大きく映るのですが、考えるよりも先に腕の動くままに描いているようで、こんな風に絵が描ければどんなにいいだろうと羨ましくなるほど。

マイヤの作品の源は旅と恋愛。三度の結婚・離婚と、多くの恋人たち。繰り返す長期に渡る外国旅行で目にした光景と、恋愛から得たインスピレーションを元に、次々に大胆で美しい作品が生み出されていきます。そうやって吸収したものを作品に昇華させるセンスにはうなるばかり。

マイヤはデザイナーになる前、19歳の時に一回り以上上の男性との間に出来た娘のクリスティーナを産みますが、すぐに離婚します。結婚は形式的なものだったと語られているので、恐らく未婚での出産を避けたのでしょう。フィンランドの事情は分かりませんが、以前書いた『リンドグレーン』ではスウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンが19歳で母になり、未婚での出産を受け付ける病院が当時のスウェーデンには無いため、デンマークで出産するエピソードが語られていました。

アストリッドは自分で育てることが困難なため、生まれて間もない息子を施設に預けるのですが、同じくマイヤも実母に娘を預け、美術学校に通います。学生時代にコンペに出した作品がきっかけとなり、マリメッコでのデザイナーとして歩みを始めます。

マイヤはマリメッコに38年間で500以上のデザインを提供。その作品を短い時間に一気に見ると、作風が思っていたよりも変化に富んでいるのに気が付きました。一つ所に落ち着かないマイヤ自身のように、様々に変化する作風を見るとマイヤの多才ぶりに驚かされます。また、デザイナーとして知られる彼女の、あまり知られていない絵画作品も素晴らしい。

その活躍の反面、気になるのは親の愛情を必要としている時期にほとんど一緒に暮らせなかったクリスティーナ。どんなに手紙では愛していると書いてあっても、実際は創作活動や恋人との暮らしを優先され、顧みられないのは寂しかったのではないでしょうか。ドキュメンタリーで出てくるクリスティーナは、あまり自分の事を語らないのですが、映画のラスト近くで幼い時から自分が存在していない感覚がある、と言葉少なに言ったのが胸に刺さります。

(舞ちゃんのお兄ちゃんは大丈夫やろうか。)

左が娘のクリスティーナ

強烈な熱量でデザイナーとして成功をつかんだマイヤ・イソラ。けれども、その光が強いほど、身近な人は陰の濃さに苦しむのかも知れません。

ともあれ、マイヤの作品作りについては強く心揺さぶられるものがあります。創作活動をしている人なら今すぐにでも作品作りに取り掛かりたいような気持になるでしょうし、絵やデザインに興味のある方には作家の創作の源が分かるのは面白いでしょう。

公開劇場など詳細は下記リンク先からご確認ください。
『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』公式サイト

2021年 / フィンランド・ドイツ / フィンランド語 / 97分 / カラー・モノクロ / ビスタ / 5.1ch
原題:Maija Isola / 英題:Maija Isola Master of Colour and Form
字幕翻訳:渡邊一治 字幕協力:坂根シルック

後援:フィンランド大使館 / 配給:シンカ + kinologue
© 2021 Greenlit Productions and New Docs

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