映画『リンドグレーン』母と子の成長物語

12月末にノルウェー夢ネットの青木先生に誘われてスウェーデン映画『リンドグレーン』を観に行きました。

青木さんに誘われたのが北欧ライターの森百合子さんのイベント『北欧ぷちとりっぷ』の打ち上げの場だったので、北欧食材のアクアビット代表の福北さんも一緒に行きたいとなり、更に北欧映画と言えば、のノーザンライツフェスティバルのスタッフ雨宮さんも誘って4人で行くことになりました。

まあ、前書きが長くなりましたが、そんな4人で映画に行き、ロシア料理を食べた話。

「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」など数々の名作児童文学を生んだスウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーンの知られざる若き日々を描いた伝記ドラマ。スウェーデンのスモーランド地方。兄弟姉妹と自然の中で伸び伸びと育った少女アストリッドは思春期を迎え、より広い世界や社会に目を向けるように。率直で自由奔放な彼女は、次第に教会の教えや倫理観、保守的な田舎のしきたりや男女の扱いの違いに息苦しさを覚え始める。そんな中、文才を見込まれて地方新聞社で働くことになった彼女は、そこで才能を開花させるが……。

2018年製作/123分/PG12/スウェーデン・デンマーク合作
原題:Unge Astrid
配給:ミモザフィルムズ

https://eiga.com/movie/91662/
ロビーには翻訳された本の展示

早く着き過ぎちゃったので、ロビーで3人を待っていると前の上映を終えられた方が出て来て「作家として活躍するところはなかったわねー」「受賞の話とかねー」と少しがっかりした様子で話していました。

告白すると、私はリンドグレーンの本は1冊しか読んだことがありません。それも資料としてでしか。映画の中では彼女が最終的には世界中の子供たちから愛される文学者になることは描かれています(書斎に置かれたファンレターが入っていると思わしき大きな郵便袋の量よ!)が、きっとその方たちはリンドグレーンの作品ファンで、好きな物語の背景が描かれていると期待されていたのでしょう。

いち、ほとんど彼女の作品を知らない私としての感想は、素晴らしい親子愛と成長の物語でした。

リンドグレーンは頭が良くエネルギーに満ち溢れた少女。まだまだ女性差別の意識が根強く、キリスト教の教会が社会(ソサエティ)の中心にあるスウェーデンの田舎町では、彼女の余りあるエネルギーの発散方法がほとんどありません(現代日本ならヤンキーへの道まっしぐら)。

愛情にあふれた家庭ではありますが、信仰心に厚い母親はそんな娘に眉を顰めるばかり。

田舎町ではまだ珍しいショートカットにして颯爽と自転車で!

17歳(かな?)のリンドグレーンは文学的才能を見込まれ、地元の新聞社で働き始めるのですが、上司と不倫関係の末、19歳で未婚の母となります。敬虔なキリスト教信者の母親はショックを受け、娘を叱責します。

その上、当時はスウェーデン国内で夫のいない女性が出産できる病院は無く、隣国デンマークで出産。さらに保守的な田舎では未婚の母が社会的に許されるわけもなく、子供は養母に預けざるを得ませんでした。

同じようにデンマークで秘密裏に出産し、すぐに養子に出したため子の顔も知らない少女が登場しますが、一方リンドグレーンは出来る限り時間を見つけてはデンマークへと会いに行きます。

1920年代のこと、今と違って移動時間が長く、決して快適な旅ではなかったでしょうが、必ず引き取るのだと強い意志が彼女を突き動かしていきます。いつか引き取る子どものために働き、稼ぎ、会いに行く。念願かなって引き取ったものの、保守的な地元には帰れず、また一人で働き、稼ぎ、子どもの面倒を見る。その過程で無鉄砲な少女だったリンドグレーンは思慮のある大人へと成長していきます。

最初の方に「親子愛と成長の物語」と書きました。その親子愛と成長は、リンドグレーンと息子だけでなく、リンドグレーンとその母親でもあります。

物語の終盤、子供を連れて実家に戻ったリンドグレーンを母親がどう迎えるのか。そして、母親が彼女の人生を肯定した最後のシーンの行動には「ブラボー!」と拍手を送りたくなりました。

全ての母と子供たちに観て欲しい作品です。

『リンドグレーン』は2月27日まで岩波ホールにて上映中。その他の地域での上映館と日程は下記の公式サイトからご確認ください。
オフィシャルサイト

さて、映画鑑賞後4人ですぐ近くのロシア料理店『ろしあ亭』へと食事に行きました。映画の半券を持っているとロシアティーのサービス付き。

昔懐かしいフォントと色使い

店員さんは全てロシア人という、日本の中のロシア。ニコリともしない店員さん、無言でいきなり手を延ばして席の後ろに置かれた何かを取ろうとする店員さん、質問しても不愛想に小声で答える店員さん。

何かとギョッとさせられては「おそロシア…」と声に出てしまいます。料理よりもそっちが気になってき、福北さんに至っては、その昔アエロフロートでヨーロッパに行ったときに怖かったロシア体験を思い出したほど。

まあ、ギョッとさせられるたびに4人で「ビックリしたねえ!」と大笑いしていたのですが。

ミタ

イベント『北欧ぷちとりっぷ』についても書いていなかったですね!今年はブログ頑張る。

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