アリ、アラビア最後の銅板転写絵付け

アラビアのAli(アリ)が初めてフクヤに入荷しました。販売は来週の10月15日を予定しています。

アリの製造は青が1965年から74年、茶が1965年から1970年。長く作られたこともあり、特別手に入りにくい製品ではないのですが、個人的な理由で今まで買い付けていませんでした。何度か書きましたが、フィンランドの友人が閉店するにあたり丸ごと買い取った品物の中に入っていたものです。

買い付けていなかった理由は本当に些細なことで、むかーし働いていた会社オーナーさんが好んだデザインだったから。別にいじめられたとかではなく、むしろ大事にしてくれていたのですが、ワンマンな彼女に振り回され困惑することが多く、アリを見るとその時の気持ちを思い出して胸がぎゅっとなってしまうからでした。知り合いがセラピストに「いい人だけれど困っている、という場合は、その人はいい人ではないのですよ。いい人なら困らせないはずです。」と言われたと話してくれたことがありました。その言葉は100%正しくはないかも知れませんが、そう思うことでいくらか気持ちが切り替えられますよね。まあ、あれから随分と年月が経って改めて手に取ると別になんてこともなかったです。時間が一番の薬なのでしょうか。

閑話休題

さて、このアリですが、アラビアにとってマイルストーンのような存在です。

かつて食器の絵付けは一点一点手で描いていました。その後技術の進歩で18世紀ごろから銅板にエッチングした版で絵を刷り、それを食器に貼りつけて焼成することで絵を焼き付ける「銅版絵付け」の手法が生まれ大量生産が出来るようになりました。

この写真はロールストランド博物館で撮影したものです。銅板に先のとがった金属の棒で絵を彫り版を作っています。いわゆる版画なので当然単色しかできません。なので色の濃淡は細かい点や線を重ねることで表現します。

ちょうど手元の資料の表紙にアリの装飾が使われているので接写しました。単色なのが良く分かりますよね?

アリはマイルストーンのような存在と書きました。理由は、アリはアラビアにおける最後の銅板転写絵付けの製品だからです。もうタイトルでバレているけどね!

銅板転写絵付けにとってかわったもの、それはシルクスクリーンプリントでした。アラビアの最初のシルクスクリーンによる多色刷りの製品、それが1965年から販売を開始した、このポモナのジャムジャーです。デザインそのものは1962年に完成していたのですが、技術の開発で発売まで数年かかってしまいました(単色のシルクスクリーンは既にありました)。

いままで多色と言えば単色刷りに手彩色だったことを考えれば圧倒的に量産向き。しかもこの美しい発色はどんなに当時の人の心を掴んだでしょう。実際最初は3種類だったパターンは後に6種類追加されて全9種類になりました。

まあ、ポモナについては長くなるので、別の機会に書くかも、書かないかも。本日のところはアリの販売予告でおしまいです。

銅板転写の展示を見たロールストランド博物館については下記リンク先からどうぞ。

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