スウェーデン、ラウス焼き工場見学

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こんにちは、買付レポートの続きです。

フィンランドには1週間ほど滞在したのち、コペンハーゲンに飛行機で移動し、電車でスウェーデンへ渡りました。
デンマークとスウェーデンの南側とは海を渡る全長7845mのオーレスン橋で結ばれていて、コペンハーゲン国際空港(カストラップ)から対岸のマルメまで僅か40分ほど。途中パスポートコントロールも無く、国境を渡っている感覚は希薄で、気楽と言えば気楽なのですが、旅行者としてはパスポートにスタンプが増えないのが、なんとなくつまらない。

ところで、トップの写真は南スウェーデン、スコーネ地方に100年の伝統を持つ「ラウス焼(Raus)」の工場です。こちらへは、友人の日本人、Mさんに案内していただきました。
Mさんはスウェーデン人のご主人と息子さんと現地在住。知り合ったきっかけは、フクヤでも作品を取り扱っている、布作家Noaさんの紹介です。
さて、ラウス焼は1911年に創業の歴史ある焼き物。ところが後継者がいないまま消え去りかけていたものを、スウェーデン在住の日本人芸術家、中島由夫さんが2003年に買い取り現在に至っています。

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中島由夫さんは最近再婚され(最初の奥様は10年ほど前に亡くなったそうです)残念ながら、ただいま日本旅行中でご不在。工場は同じく画家である息子さんのアンデス中島さんが案内してくださいました。
アンデスさんが指し示しているのが窯の入り口です。

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中はこのようになっています。
ここでは、年に1回だけ、夏至の時期に3日間かけて焼き、2週間かけてゆっくりと冷まし完成させます。火には石炭を使い、外側の小窓から随時塩をまきながら仕上がりを調整します。3日間火を絶やす事は出来ず、数人が交代で番をして見守ります。

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ところがこの窯はもう古く崩れかけ危険なため、今年は窯に火を入れないことになったとか。残念なことなのですが、実はほとんど文化維持の目的で運営している窯のため、儲けはあまり無く、修理にかかる4000万円ほどを捻出すべきかどうか悩んだ末の結論だそうです。

こちらは窯の屋根の部分。周りには去年の夏至の際に制作したラウス焼きが並んでいます。素晴らしい艶がありますが、釉薬は使っていず、塩だけでこの光沢が出るそう。保温性が良いので、冷たいものでも温かな物でも温度を保ち、製品に含まれるミネラル分が溶け出すため味も美味しく変化するといいます。
この写真の奥に写っているスウェーデン人の2人は、陶芸を学んでいる学生たち。左でしゃがんで写真を撮っている金髪の男性は去年の窯焼きの時に寝泊りして手伝ったそうです。

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これらはラウス工房一番売れ筋の壁掛け植木鉢。理由は忘れましたが(すみません)根腐れがなく、植物がとてもよく成長するとか。

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そして、こちらの不思議な鉢は手作りマスタードの道具です。スウェーデンでは毎年クリスマスの時に大きなハムを焼くのですが、その時に欠かせないのが甘いマスタード。もちろん市販のものも沢山あるのですが、こだわる人は自分で一から作るそうです。
鉢の内側で金属の球を転がし、その重みで材料をすりつぶすのだとか。手作りのマスタードは市販にない美味しさと聞くと食べてみたくなりますね。ところで、この金属の球。アンティークショップでしばしば見かけるもので、何だろうと思っていたのですが、ここで疑問が氷解。

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こちらでは地元アーティストの方も作品を提供していて、後ろのガラスケースにはその作品の数々が並んでいました。

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ここは工房。作品は熟練の職人さんによる、ろくろを使った手作りです。作品はこの工場の趣旨に賛同された職人さんにより、ほとんどボランティアのような形で制作されていると伺えば、いかに貴重な伝統かが分ります。

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不在でしたが、中島由夫さんのアトリエも案内してくださいました。Mさんによると中島さんはいつもここで絵を描いていて、声をかけると気楽に対応してくださるそうです。

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「太陽の画家」と称される中島氏は1960年代にはアクションペインティングのパフォーマンスアーティストとして知られ、日本を離れて40年以上経つ今でも、日本の根強いファンが来日公演のたびに詰め寄せ、大盛り上がりを見せるとか。

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この工場では中島氏のギャラリーも併設していて、誰でも多くの作品を鑑賞することが出来ます。場所などの詳しい情報は下記サイトに書かれています。サイトは英語のみですが、連絡先であるアンデスさんは日本語が堪能なので、日本語でも対応できると思います。
Yoshio Nakajima’s website
工場見学のあとは、敷地内のご自宅で、アンデスさん手作りのカレーとサラダを頂き、おしゃべりに花が咲いて、楽しい数時間があっという間に経ってしまいました。訪問した翌日は移動の日で、どうしてもその日のうちに午前中に買い付けた商品の梱包を終わらせ、翌朝発送をしなければいけなかったので、後ろ髪を引かれる思いで早めに失礼しましたが、貴重な体験と、本当に楽しい訪問でした。
南スウェーデンのヘルシンボリ中央駅(Helsingborg Centralstation)からバスで20分、更に徒歩と、なかなか簡単に行ける場所ではないのですが、陶芸に興味のある方には面白い場所かと思います。もしも近くに行かれるときがあれば見学に行かれるのも良いのではないでしょうか。

ミタ

窯の修復が不可能なら、本当に絶えてしまいますね・・・。
ところで、中島さんのことはSASの機内誌で紹介されていたのを読み、存じ上げていました。まさかアトリエに行く事があるとは思いませんでした。

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