子育てパパの作った子供用食器

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こんにちは、しばらく買付やイベントの告知ばかりで商品の事は書いていませんでしたね。
買い付けレポートもまだ続きがあり、お知らせしたいイベントもあるのですが、ここは小休止で久しぶりに食器のご紹介です。
この写真は、スウェーデンGustavsberg(グスタフスベリ社)製の子供用食器「Baby」シリーズのボウルとプレートです。例によって、例のごとく本来はマグも付いた3点セットなのですが、残念ながらマグは失われています。デザインは、グスタフスベリを代表するStig Lindberg(スティグ・リンドベリ)。絵本も何冊か手がけ、イラストレーターでもあった彼の洗練されたイラストが描かれています。
製造は1951年から1957年。60年以上前の製品で、しかも子供用という過酷な使用条件にも関わらず、比較的良い状態が入荷です。
描かれているのは、Baby(ベイビー)の名のとおり、小さな赤ちゃん動物とその親の動物。プレートには熊の親子、ボウルは象の親子、今回は入荷していませんがマグはクジラの親子です。
子供用の食器に使われる絵は、動物や、その親子の姿が描かれる場合は珍しくありません。その点このイラストには何の違和感もないのですが、ちょっと面白いことに気が付きました。
描かれている動物たちはどれも、いわゆる「大型動物」なのです。多くの子供用食器に選ばれる動物は、犬や猫、小鳥など可愛らしい、小さな生き物なのですが。
推測ですが、一つはリンドベリがイラストレーターとして、大きな大人と小さな赤ちゃんの対比の面白さを狙ったのでしょう。イラストでは親子の体の大きさの違いを、実際の動物の親子よりも強調しています。
そしてもう一つこの極端に大きな親は、お父さん(父性)を表しているのでは、と思いました。

象は花柄の服を着てはいますが、シルクハットを被り、額にしわを寄せ眉もキリリとしています。なんだか、男性の姿に見えますよね。

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熊だってとっても鋭い爪は怒ったら怖そうです。
子供用食器に描かれるのは母子像が多いので、もし父子像なら面白い発想でもあり、一方でリンドベリならやりかねないとも思いました。

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この手元にあるスティグ・リンドベリ作品集にはリンドベリの作品だけでなく、彼の人柄や暮らしぶりが当時を知る多くの人の証言で綴られています。

スティグ・リンドベリ作品集 [ハードカバー] / ギセラ エロン (著); 本郷 若子 (翻訳); プチグラパブリッシング (刊)

その中でリンドベリと同時期にグスタフスベリで働いていた、リサ・ラーションの言葉がこのように紹介されています。
「(妻の)グンネルが結婚してまもなくポリオを患い、残りの全半生を車椅子に縛られて生活していたため(中略)毎日、昼時になると家へ帰りグンネルと食事を共にし、午後には子どもを迎えに行っていた」

そう、リンドベリは3人の子育ての中で、病気の妻が手の届かない部分をずっと見ていたのですね。
いまや男女平等で育休中のパパがパパ友とベビーカーを押して歩く姿はスウェーデン名物(?)となっていますが、女性が本格的に社会進出したのは1960年代のこと。リンドベリの時代はまだまだ専業主婦が珍しくなく、子育ての多くの部分は母親に委ねられていました。
同著には1962年に開催された記念展覧会で、当時の国王グスタヴ11世アドルフが何かに記名しているところをリンドベリと彼の娘2人が見ている写真もあります。こういった式典に娘たちを連れてくるところに(もしかしたら妻の代理かもしれませんが)リンドベリが子どもたちを大切にしていた様子が伺えます。
もっとも芸術肌の彼が父親というのはいささか大変だったらしいですが。
そう、先に「リンドベリならやりかねない」と書いたのは、彼が実際に子育てパパだったから。無理の無い自然な発想で、父子像を描きそうではないですか。大きな、大きな動物は、父親である彼自身の投影と考えたら、このシリーズがもっと好きになりそうです。

ミタ

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