おはようございます。
買い付けに行くと不思議なことに、今まで縁のなかったアイテムに立て続けに出会うことがあります。
これは、同業の方とお話したときも「そうなんですよね」と同意を頂いたので、私だけではないようです。
今回、縁があったのはこのアラビアのRosetteシリーズです。Inkeri Leivoの「Arctica」のフォルムにEsteri Tomulaがデコレートを施した、1983年の作品です。
トムラは1984年に40年間勤めたアラビアを去っていますから、アラビアでの最晩年の作品となります。しかもその年しか生産されていないこちらは、珍しく、トムラの作品を集めたカタログにも「Rosette」という名前は記載されているのですが、写真はありません。
トムラはその40年のデコレーター生活の中で、作風がどんどん変化しています。もちろん時代の要求も有ったとは思いますが、ほとんど同じ時期(1947年から1986年までアラビアに所属)に活躍したRaija Uosikkinen(ライヤ・ウオシッキネン)があまり作風が変わらなかったということを考えても、かなり変化があるほうではないでしょうか。
同じようにその作家生活において、作風がめまぐるしく変化していった人物として、私がまず頭に思い浮かぶのが、スペイン人の画家、パブロ・ピカソです。
青の時代から始まり、様々な変化を遂げ、一番有名なキュビスムへ。そうして、また古典的な表現に戻ったと思ったら、またシュールレアリスムへと具象から離れていきます。
トムラも初期の水彩画で描いたような柔らかで描写的な表現から、幾何学的な表現、細いペン先で書き込んだような線を生かした時代を経て、今度は面を使った色を強調した表現へ。やがて、半具象へとたどり着き、次ぎはボタニカルアートのような具象へと戻ります。
そうして、最晩年のこのRosetteを初めとして1980年代半ばに作られた数点は、今までのトムラとはまた違う表現となっています。
まず、目に付くのが余白の多さ。それまでのトムラの作品はいずれの時代も大胆な大きな植物が画面いっぱいに描かれているか、小さな花が沢山描かれ、やはり画面を埋め尽くして、余白がほとんど見られません。
ちなみに、この余白の少なさと言うのは西洋絵画の特徴でもあります。日本画とはそこが大きく違う。
この頃のトムラの作品は、白い画面の中に、淡いブルーでふわりと花が描かれていて、日本の湯飲み茶碗を連想させます。
ピカソの晩年は子供のような絵にたどり着きます。子供のときから天才的なデッサン力で対象物を正確に描き出した彼は、晩年は彼には無かった子供の表現を取り戻すように、形から開放され、自由奔放な幼児が描いたような絵を91歳で亡くなるまで楽しんで描き続けました。
晩年のトムラにどのような心境の変化があったのか、私には分かりません。実際この作品の翌年にはアラビアを去っていますから、引退のときを見据えていたのは想像に難くありません。それでも、どれも肩の力が抜けたような、穏やかで気負いのない表現で、トムラもまた、ひとつの境地にたどりついた感じがします。
今回はこのRosetteのブルーのコーヒーカップ、クリーマー、ケーキプレート、ピンクのケーキプレートが入りました。来週アップ予定で進めていますので、お楽しみに。
ミタ
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ピカソの本名ってものすごく長いんですよ!
パブロ、ディエーゴ、ホセー、フランシスコ・デ・パウラ、ホアン・ネポムセーノ、マリーア・デ・ロス・レメディオス、クリスピーン、クリスピアーノ、デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ
寿限無(じゅげむ)なんて目じゃないです。