今日の文章はあとで見直して修正するかも。いつもシンプルに情報を絞って書くようにしているのですが、今回は話があちこちに飛んだり、長くなったり、引用が多くなるし。うーむ。読みやすいように章を作ってみます。
■きっかけはメンバーの投稿
フクヤでは北欧ヴィンテージ好きな人が情報を交換したり、コレクションを見せる場として『北欧ヴィンテージが好き』というFacebookのグループを運営しています。
運営といっても、フクヤは主催者に過ぎず、理想的にはいつかフクヤは遠くで見ているだけで、メンバーさんだけのやり取りでグループが活発になればいいなあと思っています(グループ内での宣伝、売買は禁止)。
とはいっても、きっかけがなければ投稿もなかろうと、今月は試しに先月亡くなったオイヴァ・トイッカの作品をテーマに投稿を呼びかけました。何人かの方がお手持ちの作品の写真を出して下さり、反応なかったらどうしようと思っていたので、胸をなでおろした次第です。
メンバーの中に、オイヴァ・トイッカが1989年に発表したロールストランドのCobolti(コボルティ)を投稿して下さった方がいました。
コボルティとはこの作品です。この写真は投稿されたものではなく、当店で持っているもの。
その際に「 絵柄が不思議。何を描いてあるかご存知なら教えて下さい」と質問がありました。そもそもアラビアではなく、ロールストランドで制作されたのも不思議。いろいろ、気になったので本腰を入れて調べることにしました。
まさかこんなものが描かれていたなんて
ネットでの検索は、最初は思ったような結果が出なかったのですが、様々な検索ワードを試したり、スウェーデンのGoogle(.se)やスウェーデン語で検索するうちに、ようやくデザインの背景について書かれた文章に辿り着きました。
そこで説明されていたのは、全く想像もしていなかった内容で、最初はGoogle翻訳が間違っているのではと、単語一つ一つを確認してしまうほどの衝撃でした。
いわく『恐らく、原子力発電所を描いた唯一の製品』『トイッカは燃えているチェルノブイリを中国風の装飾の中に隠した』『陰気なテーマは市場では受けなかった』『現在はトイッカファンの垂涎の品となっている』
チェルノブイリ原発事故と北欧
チェルノブイリ原発事故は1986年に現ウクライナ(旧ソ連)のチェルノブイリで発生した史上最悪の原発事故でした。コボルティの制作は1989年なので、その3年後のこと。
北欧は旧ソ連に隣接しているため、汚染を逃れることはできませんでした。しかも当時はソ連の対応の遅さ、隠ぺい体質が問題を更に深刻化させました。
汚染物質のセシウムは苔に堆積しやすく、苔を主食にしているトナカイ、そのトナカイで生計を立てているラップランドの人たちにとって収入にまつわる深刻な事態になりました。
また、キノコ類やベリー類もセシウムが蓄積し、日常的にキノコやベリーを摘んだり、(レジャーとして)野生動物を狩る暮らしをしている北欧の人にはとても身近な問題です。
当時、スウェーデンは汚染状態について詳細に調査し、詳しい情報を提供する冊子を配り『そもそもの国の基準は大変厳しいので、それを超えて摂取しても良い、野生動植物を食べたい人はこの冊子を参考に、自分でリスク判断をして下さい』と対応したそう。
詳しくは下記リンク先のスウェーデン在住研究員の方のコラムをご覧ください。
チェルノブイリ原発事故のあとのスウェーデン
ちなみにコラムを書かれている方は、当店で扱っているコーヒーの焙煎元、福島県の珈琲香坊さんのお知り合い。私は先にこのコラムを知っていたので、数年後その偶然に大変驚くことになります。
自己判断の国、北欧
先のチェルノブイリ事故についてのコラムを読んだとき、同じことを日本が行ったらどうなったろうと考えざるを得ませんでした。 特に読んでいたのは福島原発事故から間もない時だったので。
日本だったら…
自己判断に任せるなんて政府は無責任だ!抗議だ!
ってなっていたかもなあ…。
その時思い出したのが、伊藤美好さんがデンマークの小学校に子どもたちを通わせた体験を書いたエッセイ「パンケーキの国で」の一節。
子どもの林間学校の持ち物について先生から「自分が要ると思うものを持って」来るようにと指示され、日本との違いにショックを受けたエピソードです。
小さい時から自分で考えて判断する訓練をしながら育った国の人たちと、指示されたことを正確に行うことを要求されて育った国の人たち。どちらが良いとか悪いとかではなく、国民性は教育かもなあとしみじみ思ったものです。
伊藤美好さんの「パンケーキの国で」は出版されていますが、全文がネットにも公開されています。下記リンク先からお読みいただけますよ。
パンケーキの国で ~子供たちと見たデンマーク~
コボルティの意味は
さて、話は戻って、トイッカのCobolti(コボルティ)について。
コボルティの名は音の響きから、コバルトブルーを使っているから、コボルティなのかな、と漠然と思っていました。けれどもテーマが分かった今、タイトルにも意味があるのだろうと思わざるを得ません。
ところがどうしてもcobolti(コボルティ)の意味が分からない。
もしかして、最初の印象があながち間違いではなく、コバルトなのかな、と思い直してみました。
コバルト、といっても、色ではなく金属のコバルト (偶然なのかスウェーデンで発見された金属) 。もしかして原発に関係あるかもと調べると、金属のコバルトを使って核爆弾を作ることができると分かりました。ただしあまりにも危険な兵器のため実用化はされていないとか。
コバルト(cobalt)はフィンランド語でコボルッティ(koboltti)。うん、ちょっと cobolti(コボルティ) っぽい。
さて、この推測は合っているか、全くの筋違いか。
トイッカは何を作ったのか
チェルノブイリは北欧、そして旧ソ連に隣接しているフィンランドにとって日々の暮らしに恐怖を与えました。
トイッカは食器の上に原発に対する、恐れや怒りを描いたのでしょう。美しくも幻想的な世界を描いていたトイッカには珍しい、感情の吐露を表した作品です。
気の抜けたようなユーモラスな作風のトイッカが描いたと思えない強い表現。何が描かれているのか分からなくても惹きつけられるのは、その強烈なメッセージ性にあるのでしょう。
チェルノブイリ事故を知ったのは、学校の校外学習で長野県で合宿していた時。部屋のテレビをつけたら、何やら外国で大変な事故があったらしいけれど何だろうね、とクラスのみんなで観ていたのを覚えています。それから30年以上が経ち、つまり、セシウムは半減期になったということですね。
Coboltiはちょうど春に買い付けていたので、来週アップするために準備することにしました。どうぞ、今しばらくお待ちください。
ミタ
P.S.
Facebookの『北欧ヴィンテージが好き』グループでは参加メンバーを募集しています。下記リンク先からどうぞ。質問がふたつあるので、それにお答えくださいね。
https://www.facebook.com/groups/885068275032950/
P.S.2
なぜ、ロールストランドで、という疑問はここまで調べるのに疲れてしまったので放置しています。機会があれば、知っていそうなところにちょっと聞いてみます。