ラジオを聞いていたら冬季オリンピックまで半年なんて言葉が聞こえました。あとたった6ヶ月でこの猛暑からウィンタースポーツができるほど気温が下がるなんて非現実的と思いましたが指を折って数えると半年後は真冬。どうも本当らしい。
冬が来るなんて信じられない程に暑いここ数日ですが、ソースボートと一緒に写っているのは、まったく季節外れのウールのミトンです。これには理由があります。
このソースボートはノルウェーにかつて存在したStavangerflint(スタヴァンゲルフリント)のSelbu(セルブ)シリーズです。Selbu(セルブ)とはノルウェーの街の名称。そしてセルブについて調べると街の名称がついたニットのパターン『Selburose(セルブローズ)』で有名とありました。
セルブローズとは北欧のミトンやセーターでお馴染みの、この八角形のパターンです。私はてっきり雪の結晶と思っていたのですが、バラの形だったのですね。バラはバラでも北欧の食器にしばしば描かれる野バラなのかな。
私は編み物はしないので詳しくはないのですが、想像するに多くの伝統的なパターンにはその起源が分かっていないケースが多いのではないでしょうか?それに反してこのセルブローズははっきりとした記録が残っています。
それは1857年の冬の事でした。10代半ばの羊飼いの少女Marit Emstad(1841-1929)姉妹が、日曜日のミサに手編みのミトンを身に着けて現れました。2色で作られた星のような形は、今まで全く見たことの無いパターンでした。そのパターンは地元で人気となり、様々なアレンジも生まれ、それぞれに例えば『コーヒー豆ローズ』『猫ひげローズ』などユニークな名前が付けられました。
最初にミトンを作ったMarit Emstadの写真も残っています(既に少女ではない頃ですが)。Marit Emstadは古いニットパターン(イタリア、ドイツなどの1500年代から1700年代の図案集に似た柄がある)や木彫りの装飾からヒントを得たのではないかと言われています。
Av Ukjent – Riksarkivet, CC BY 4.0, Lenke
現在セルブローズには100以上のバリエーションがあり、『8枚ローズ』『星ローズ』など名付けられているとか。今ではノルウェーを代表するニットのパターンだけでなく、ノルウェーに限らず、ノルディック柄と聞けば皆さんが最初に思いつくのがこの形ではないでしょうか。
しかも話はそれで終わらず、1991年にセルブは街の紋章をこのように3個のセルブローズに制定しました。ちょっとビックリ。
Av Einar H. Skjervold – Selbu.kommune.no/, Offentlig eiendom, Lenke
さて、話をスタヴァンゲルフリントのソースボート「Selbu」に戻しましょう。写真ではちょっと見づらいですが、雪の結晶のようなパターンが描かれているのがお分かりでしょうか?
矢尻のような先端を数えるとセルブローズと同じく8本あります。もしセルブローズについて知らなかったら、雪の結晶かなと思っていたところでした。ノルウェー人なら「Selbu」と見ただけでピンとくるのでしょう。
セルブのソースボートは来週アップ予定です。また、そろそろ来年の冬に備えようという方は下記リンク先からエストニアミトンをご覧になれます。
エストニア製手袋(ミトン)
次の冬季オリンピックは韓国ですから日本からも沢山の方が行かれるのでしょうか。観戦予定の方は今からノルディック柄で防寒具の準備をされてみては?夏のオリンピックではパッとしない北欧諸国ですが、冬季オリンピックでは打って変わって活躍しますしね。
ミタ
今日も昨日に続いて箸休め回でしたね…。