映画『グレイテスト・ショーマン』と北欧の失恋物語


昨日、確定申告のために二子玉川に行ったついでに109シネマで映画『グレイテスト・ショーマン』を観てきました。実は始まってから「ミュージカルだったか!」と思ったほど、ヒュー・ジャックマンが出ているショーの話、という以外ほとんど前知識がなく、かえって物語に入り込むことが出来ました。
さて、映画でヒュー・ジャックマン扮する実在の興行師P.T.バーナムがスウェーデン人歌手のジェニー・リンドのアメリカ公演ツアーを行うエピソードがあります。映画そのものは虚実ないまぜですが、ジェニー・リンドは実在の人物で、バーナムによるアメリカ講演も本当にあった話。
ジェニー・リンド(スウェーデン語読みならイェニー・リンド、かな)はオペラ歌手で1820年生まれ。映画にも有名人として描かれていましたが、実際1940年代にはヨーロッパでは知られた存在で「スウェーデンのナイチンゲール」と称されていました。バーナムとアメリカ公演を行ったのはオペラから引退してからの1950年の時です。
リンドの名声の程は、昨年まで使われていた旧スウェーデン50クローナ札に彼女の肖像画が描かれていたことでも分かります。

この旧札は2017年7月1日からは紙くずとなってしまうと聞き、急いで去年の春に手持ちの分を使い切ったため、今は1枚も持っていません。日本はどんなに古いお金でも銀行に持って行けば交換してくれるのに、スウェーデンってシビア。
さて、そのリンドが現役のオペラ歌手時代の1843年にデンマーク公演を行ったときに、23歳の彼女に恋をしたのが当時38歳だった童話作家のアンデルセンでした。熱心に求愛するも見事に失恋。それでも気を引こうと書いた童話が『ナイチンゲール』だそう。
『ナイチンゲール』は、きれいな声で鳴く小鳥ナイチンゲールを可愛がっていた中国の皇帝の話。中国の皇帝にある日、日本の皇帝から宝石細工で出来た機械仕掛けの小鳥が贈られ、その鳴き声に夢中になっているうちに本物のナイチンゲールは姿を消してしまう。やがて病に倒れた皇帝が機械仕掛けの小鳥の歌声を聞こうとすると壊れてしまってもう動かない。そんなとき逃げたナイチンゲールが戻ってきて美しい鳴き声を聞かせ、皇帝は回復する、という粗筋です。
全文は著作権が消滅した作品をインターネットで公開している電子図書館「青空文庫」に収録されていますので、ご興味があればお読みください。
小夜啼鳥 楠山正雄訳(青空文庫)
偶然にもつい最近、図書館で借りた『ありのままのアンデルセン』にこの恋の顛末が紹介されていたので、ああ、あれか、と膝を叩きました。

もう本は返してしまったので、正確には覚えていませんが、アンデルセンは確かに失恋を繰り返して生涯独身だったけれど、内心男女の付き合いに臆病で、無意識に成就しない相手に向かっていたのではないか、というような事が書かれていました。強烈な虚栄心と、激しい劣等感を持っていた彼ならば、あり得るなあと思える説でした。
さて、冒頭のお皿はスウェーデン製の飾り皿。中央に機械仕掛けの小鳥、周囲に本物の小鳥が描かれています。今日まで考えたことは無かったのですが、もしかしたらこれはアンデルセンの物語にちなんでいるのかも知れませんね。お皿は下記リンク先からどうぞ。いくつか入荷していましたが、現在残り1枚です。
Gustavsberg Gratulationstallrik 5 (1976年)
ミタ
映画は最後はスカッとする話で面白かったです。

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