一昨日、仕事に煮詰まった時に、冷蔵庫に少しずつあった残り物(ギリシャヨーグルト、干しブドウ、干しイチジク、ジャム)消費を兼ねてカップケーキを一気に作りました。カップケーキになったのは、卵が1個しかなく、パウンドケーキ1本には足りなかったという実用的な理由からです。
さて、撮影に使ったのはアラビアのHilppa(ヒルッパ)です。赤地に白ですずらんのような愛らしい花が描かれたパターン。ヒルッパには少し思い出があります。
初めてHilppaに出会ったのは、家人の留学に伴って滞在していたアイルランドから2004年に帰国し、ネットショップの担当としてアルバイトを始めた近所の雑貨屋さんの店頭でした。どこにでもあるような雑貨に混ざって、棚に置かれていたのがHilppaのシュガーボウル。10代のころから20世紀初頭のアンティークが好きで青山の骨董通りをウロウロしている高校生でした。けれども、不思議とそれまで60年代のデザインは目に入っていなかったので、Hilppaのデザインがひどく新鮮で、それから北欧のビンテージに惹かれた始めました。
お店にあったアラビアのビンテージは、お店のオーナーさんが旅行ついでに買ってきた物だったため数が少なかったので、もっと仕入れられないかと、自らフィンランドのアンティークショップを探し、商品を選びオーダーをし、撮影をして説明を書き、お店のネットショップに夢中でアップするようになりました。
とはいえ、その頃はろくな資料は手に入らず、Hilppaも名前もデザイナーも分からない状態。まあ、いいやと、すずらんに似ているからフィンランド語ですずらんを意味する「Kielo(キエロ)」と勝手に適当な名前を付けてアップしました。アルバイトだから気楽なものでしたし、ネットが今ほど普及していなかったので、ネットの影響力を知らなかったことは否めません。
アルバイト先では当然、興味もない雑貨も販売しているので、やがて自分で好きな北欧ビンテージの専門店を開きたくなり、独立したのは、2年後の2006年のこと。さすがにそうなると文責があるので、Hilppaの名前が判明するまで「赤に白い小花」とか何とか、明らかに呼び名と分かる商品名を付けていたはず。
それから数年後、某北欧ビンテージショップのサイトをふとみると、Hilppaの商品名が「Kielo」となっているではないですか。当時は既にフクヤではHilppaとしていたし、バイト先のネットショップも閉鎖していたのですが、恐らく私が付けた名前が伝言のように広がって、どこかに残っていたのでしょう。ネットで公開するという事はこういう事かと、ひゅっと息をのみました。彼らも同じ発想をしたのかも知れませんが、もし私がきっかけなら申し訳ない。もう何年も前にバイト先だったショップそのものも閉店したので時効と思って告白します。
今は出版物や、ネットを開設している現地のショップが格段に増え、当時よりもずっと情報が充実しています。ですので検索すると、十数年前よりもずっと早く探し物に辿り着き、答えが手に入りやすくなってきました。ただ、あの頃少ない手がかりを元に英語や現地語で検索したり、(Google翻訳もなかったので)辞書を引いたり、現地の人に尋ねたり、あっちに行ったり、こっちに行ったり、右往左往していると、時間はかかったけれど、調べている物とは別の商品やデザイナーについての情報に思いがけずぶち当たり、知識として蓄積していったのは面白かった。
最近は正解に辿り着くまで紆余曲折することが少なくなったので「あれ、これってそうなんだ。今はいらないけれど、いつかのために一応とっておこう」といったボーナスに出会う機会が少なくなりました。ここ数年で新しくショップを始めた人も、そういう知識を増やすチャンスが減っているのかもなあと思い、まああの頃は大変だったけれど得るものも有ったので実にはなったよね、と懐かしく思い出しています。
ミタ