こんにちは、なんだかすっかりフクヤ通信がご無沙汰になっていました。
なんでかなあ?
さて、今日ご紹介するのは、3月にフィンランドで買い付けた絵皿です。フィンランド北方地方の民族衣装を身につけた人物が描かれています。
最初に手前の男の子を買い付け、次に行った馴染みのアンティークショプで「見てみて♪こんな珍しいの買っちゃった♪」と差し出すと「これの女の子を持っているよ」とその場であっさりペアになりました。なんだ、自慢しようと思ったのに。
とはいえ、それほど見かけるプレートではありません。そのアンティークショップのオーナーに聞くと、1952年製。約60年前のお品は、当店ではかなり古い方に入ります。男の子は飾っていただけなのでしょう、状態が良く使用感はありません。一方女の子は食事用のプレートとして使っていた様で、小傷と、何よりもプリントが薄くなってしまっているのが残念。でも、全体の雰囲気を壊す程度ではなく、充分可愛らしい。
デザイナー名はありませんが、ライヤ・ウオシッキネンなのではないかと思っています。
1947年、24歳になる年にアラビア社に入社した彼女の1950年代初頭の作品はいくつかあります。
このプレートは、彼女を代表する作品、エミリアやカレワラシリーズとは少し顔が違いますが、1950年代はこのように、アーモンド型の目と目が離れた顔を描いていましたし、短い横線で鼻を描く方法も同じです。
さらに、手の表現が後年と同じです。
これが、絵皿のカップを持つ手。
こちらは、その5年後くらいに描かれたEmilia スナックプレートの同じくカップを持つ手です。
手首を内側にぐいっと曲げた表現方法は、かなり独特です。
顔の描き方は変化しても、このように手の描き方のクセが残っているのは、充分考えられませんか?
また、しっかりとしたアウトラインも彼女の特徴が出ているように思えます。もっとも、アンティークショップの話では、はっきりとは分らない、とのことでしたので、私の個人的な見解ですが。
さて一方、一部でライヤ・ウオシッキネンといわれているものの、個人的に違うんじゃないかなあと思っているシリーズがあります。
こちらの、フィネルの一連の中世の人物を描いたシリーズです。
正式な名前は無く、単に鎧をまとった騎士たちが描かれているので、私が勝手に「騎士物語」と名前をつけました。すみません・・・。
が、その後フィンランド語でも「騎士」と呼ばれていることが分りました。どこも発想は同じですね。ちょっと安心。
さて、このシリーズに疑いを持っている、最大のポイントは目です。
ウオシッキネンは、初期から晩年に渡って、絵柄は変化しているものの、人物の目の表現は一貫して黒丸です。
●←こんな感じ
ところが、この騎士柄シリーズはどれもパッチリ二重の上に白目部分までありますね。対して、同時期に描かれたウオシッキネンの人物画はどれも目は黒丸。
もし騎士シリーズがウオシッキネンとしたら、このフィネルの作品だけ目の描き方を変えた、理由が分らない。
それと、先ほども書きましたが、彼女は曲線を良く使うので一見柔らかい表現に見えますが、描く線は意外ときっぱりとしています。ところが、この騎士の線は、女性の膝の辺りなどの服の表現にみられるように、どちらかというとよろっとしたラインです。
ウオシッキネンはそもそも服のしわをあまり描かない傾向にあり、描いてもこの女性のドレスの様に、グラフィック的にシャキッと処理しがちです。
また、彼女は好んで19世紀をテーマにするのですが、中世(ざっくり言って12-14世紀ごろ)は描くことがありませんでした。
まあ、そんなわけで、見れば見るほどウオシッキネンではないと思えてきてなりません。フィンランドでもウオシッキネン作とされていたり、されていなかったりしますが、どうなんでしょうねえ?当時流行していたウオシッキネン風に別人が描いたのではないかと疑っているのですが、いまだ分かりません。
ビンテージを扱っていると、分らないことは沢山あって、資料が整っている新品を扱うよりも、ずっと1点にかける作業量が多くなってしまいます。でもそれを解明していくのって、実は大好きなのです。ほとんど、仕事を離れた趣味の域。というか、これが好きだから、作業量の多さも苦にならないのかもしれません。
見て楽しく、調べて楽しいのも、ビンテージを集める良さなのですよね。
ミタ
スウェーデン語教室の講師をしてくださっている花水さんは大のビンテージコレクター。彼女も、背景を調べるのが好き、とおっしゃっていて、同じ匂いを感じました。ふふふ。
私は、ミタセンセの背景にズンズン分け入って紡ぎ出す記事を読むのが大好き。
>>k7さま
いやー、そう言っていただけると励みになります♪
これからもサボらないで頑張りますねー。
実は私も長らく、騎士の絵柄は「ウオシッキネンではない」と思っていました。同じようなことを考えていた方が居るなんて、力強いです。
しかも、線のタッチの違いまで分析されていて、説得力がありますねぇ!!!
そうなると、最初の「マグカップの持ち方」もますます信ぴょう性が高まるばかり。
みたさま、
いつも楽しく拝見してます!
ライヤウォシッキネン、思い切った考察ですね(笑)
お仕事とはいえ、器を愛してらっしゃるのがわかります。
夏休み、初めての北欧旅行に行くことにしたのですが、もしよろしければオススメのホテルを教えて頂けますか?ストックホルムとコペンハーゲンなんですが。
中心に近くて便利なところを希望ですが、どこも2人で一万円以上ばかりで。。。
安いところは不安ですが、みたさんがお泊まりなら安心かと思いまして。是非よろしくお願いします!
>>花水さま
こちらこそ同じ意見で心強い!やっぱり騎士の絵はライヤ・ウオシッキネンとは違いますよね?そうすると、誰なのかしら、と同時代の人を探ってみるつもりです。
絵皿は分らないのですよねー。単に私の勘なので何とも・・・^^
>>みんみんさま
こんにちは!宿に何を求めるかによって違ってしまうのですが・・・。
まず、シャワー、トイレ共同のところを探せばかなりお安くなります。ヨーロッパの人はそういった宿泊施設に慣れているので、清潔に真っ当に使っていて、共同でも不快な思いはしないと思います。ヨーロッパスタイルのホテルは大きなところでも施設共同の部屋を持っている場合もあります。
プライベートのシャワー、トイレが希望でお安いところでは、コペンハーゲンではフィンランド系のOmena Hotelはいかがですか?
http://omenahotels.dk/
コペンでは宿泊したことはありませんが、フィンランドでは安くて設備が整っていて清潔で快適でした。ただし、完全な無人ホテルで部屋に入るパスワードがPCと携帯SNSに送られます。海外SNS対応の携帯でないと受け取れないので注意を!
ストックホルムは私も鋭意探し中です^^
例えば、こんな安ホテルポータルサイトで探して見るものいいとおもいますよ。実際に宿泊した人の口コミもあるので、参考になります。
http://www.budgetplaces.com/
私は昔歴史を勉強していたのですが、このずんずんと深く入っていく考察ぶり、ミタさんの美術を学んだ知識とあいまって、論文にでもまとまりそうな雰囲気ですね。
遠い昔、古文書を読んだ記憶がよみがえります。
ううむ。おもしろい。
>>andymomさま
andymomさんは、歴女、でしたよね?
そんな大した深さではないので、お恥ずかしいです・・・。