第4回「北欧を知ろう」講座

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おはようございます。昨日はバレンタインデイでしたね。いつもはチョコレートケーキを焼くのですが、今年は写真のブラウニーを作りました。ココアパウダーだけで作る簡単レシピです。
お菓子つくりだけでなく、お料理の時もいつも活躍するのは、後ろに写っている、デンマーク製のボウルです。日本の一般的なボウルと違って、深みがあるので、材料を混ぜやすい。
この、デンマークRosti社の「マルグレーテ ミキシングボウル」は1954年に作られ、50年以上経った現在でも同じ形で作り続けられています。その優れたデザインは、MoMA永久展示品となり、MoMA Storeでお買い求めいただけます(もちろん、他のお店でも。でもフクヤには無い)。
MoMA Store
さて、話は変わって、2月13日、東北工業大学准教授 梅田弘樹氏を講師に迎えて、第4回目の「北欧を知ろう」講座が目黒区で開催されました。
梅田氏はフクヤでも、その作品を取り扱ったことがあり、また、家人の中高の同窓生という個人的なつながりもあって、今回ほとんどボランティアとして講演を引き受けてくださいました。
→梅田氏のEclipseシリーズ(現在、再入荷の見通し立たず・・・)
梅田氏は、経歴にもあるとおり、もともとはキヤノンでプロダクトデザインを担当していたのですが、「消費されるデザイン」に疑問を持ったとき、アラビアのTeemaシリーズに出会ったことがフィンランドデザインに興味を持ったきっかけとか。
アラビアのTeemaシリーズはフィンランドデザインの巨匠と呼ばれる、カイ・フランクが1953年に発表したKiltaシリーズが元になっていて、それから50年以上たった現在でも、ほとんど形を変えずに製造されています。
冒頭のミキシングボウルと同じですね。
ではなぜ、北欧のデザインがこんなに長く愛されるのか、その理由について留学されたフィンランドを例に、梅田氏なりの考えを語ってくださいました。
まず、デザインの持つフィンランド性を産む背景とは何か。
フィンランドは他のヨーロッパ各国と違い、王国ではなく、王侯貴族を持たない。つまり、貴族を喜ばせるための凝った、華やかなデザインという方向に発展をしなかったのが特長とか。そのため、庶民が使う、機能的なデザインが発達しました。
普通の人が使う物のデザインは、自己表現の発表の場ではない。こうして、どこにでもある様なものを作り出すことが、結局は何十年ものロングセラーへとつながるのではないか。梅田氏は、つまり、ここが自分のデザインが目指すところではないか、と感じたのだそうです。
そうは言っても、実は目立つような変わったものよりも、どこにでもありそうな物を新しく生み出す方が難しいのではないかと思います。どうすれば、フィンランドからはそんな発想ができるのか。
その答えの一つが、デザイナー自身が「作り手」であり、「使い手」である、という点ではないか、というお話でした。
フィンランドに限らず、欧米では、ごく一般の人でも自分で物を作ったり補修して使うことがありますが、フィンランドが他と異なる点は、自然の中での生活から発生した必然性です。
夏の数週間を多くの人がサマーハウスで過ごし、そこでは、電気、ガスなどが整備されていない場合もあるのだとか。人々は火をおこし、道具を作り出す必要があります。
普段は会社勤めの若い世代の都市生活者も、魚を捕り、さばき、火をおこし、調理してと、ごく当然のように自然を相手にしながら休暇を満喫するそうです。
そして、デザイナーも例外でなく、自分で手を動かして物を作ることを知っているので、製造現場や技術に対して敬意があり、またいかにして合理的に、あるいは量産ができるのか、ということも考えます。
加えて、使い手でもある彼らは、本当に必要なもの、そして機能に対しても厳しい目を持っています。
「作り手」と「使い手」。その二つが上手く融合した土壌があり、使いやすく、生活に合理的で機能性に絞ったシンプルな、ロングライフのデザインが生まれるのだとか。
けれども、フィンランドデザインはそれだけで、こんなに広く愛されるものなのでしょうか。
その秘密は梅田氏によると、「どこか野暮ったい所と思うんですよね。あたたかみがある、と言い換えることも出来るかも知れないけど」
そうそう、と私も思わず膝を叩きました。よく話題になる、北欧デザインの機能性や合理性だけで、本当に人は手元に置きたいと思うのでしょうか。物を手にする気持ちは、どこか恋にも似ていて、その製品に好感を持つからこそ沸き起こる感情なのではないでしょうか。
完璧な男性に憧れは感じていても、結局恋をするのは、ちょっとはずした人だったりすることは良くあること。フィンランドデザインも、どこか完璧から少しはずしたところに、人は惹かれるのかもしれません。
ところで、どうしてフィンランドデザインは少し野暮ったいのか。「それは、フィンランドがヨーロッパのなかでも、田舎国だからですか?」と尋ねると、梅田氏は「そうかもしれませんね」。また、他の方が「その野暮ったさは計算しているのでしょうか」との質問には「本人に確認したことはありませんが、違うと思いますよ」とのこと。
この情報社会の中で、世界はどんどん均一化していっています。「でも、フィンランドにはいつまでも、そういうところは残して欲しいですね」とのことでした。
ミタ
ガラスのお話も面白かったのですが、書ききれません。いつかの機会に。
また、Eclipseの再生産については多くのお問い合わせを頂いています。いろいろ難しい課題がありますが、現在梅田氏と前向きに模索中です。

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第4回「北欧を知ろう」講座」への4件のフィードバック

  1. フクヤでも大人気の白くま貯金箱が復刻版として(輸入元:パドルビー?)また売られるようですね。
    でも!
    ミタさんが買い付けてくれたうちの子の方が数倍かわいい!!
    と我が熊バカを満喫してます。(笑)

  2. >>たま湯さま
    ええ!そうなんですか!!
    全然知りませんでしたー(現行品情報にはとんと疎い・・)。たま湯さまのシロクマちゃん、そんなに可愛がっていただいて嬉しいです♪ふふふ♪

  3. デザインや色には気持ちがくつろぐものと気持ちが緊張するのものとがありますね。緊張することが気持ちよかった時代もありましたが、今は気持ちいいの基準が「くつろぎ」にもっとも片寄っています。
    ガラスの話、聞きたい聞きたい。~待ってます。

  4. >>もももままさま
    そうですね。ちょっと抜けている感じが寛ぐ。家もそう。わたしの理想の家って「おばあちゃんち」風なんですよ。なかなか難しいですが。
    ガラスの話、個人的に、とっても面白かったので、きっといつか書きますね♪でも、こういう「おお!」と思った話は、かえって思い込みが強すぎて、上手くお伝えできなかったりもするのですよねー。

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