好きこそ物の


前回の買い付けで、入手したこのカップの名前は、Musta Ruusu。フィンランド語で”黒薔薇”と言う意味です。
フォルムデザインはカイ・フランクで、彼の名作Kiltaと同じ形。デコレートはエステリ・トムラ。植物画を得意とする彼女らしい作品です。
1967年から70年までの間製作されていたもので、この頃の彼女は同じくリアルなタッチのキノコボウルもデザインしています。
やはり彼女の代表作のKrokus(クロッカス)はその10年くらい後のデザインで、60年代のデザインに比べラインがずっとシンプルになっています。同じ頃作られたKatrilliもやはりシンプルなラインで、100周年Gardeniaになると、線よりもむしろ面で表現された、かなりデフォルメされたデザインとなっています。
これは、この10年間に彼女の嗜好が変わったというよりも、時代的な背景があるのかもしれません。
それと言うのも、1970年代はデザイン全体がシンプルなものが好まれた時代で、トムラもArabia社からもっとシンプルなものを作るように要求されたよう。実際(おそらく不本意ながら)その頃、横線だけのシンプルなデザインもいくつか作っています。
もしかしたら、Krokusが当時短命だったのは、時代の好みに合わなかったところに原因があるのかもしれませんね。それでも、彼女は装飾の大切さを説き、装飾にこだわってデザインしていたらしい。
1980年代に入ると、再び時代の要求が変わったのか、まるで水を得た魚のように、ボタニカルアートのような細密な植物画のシリーズを次々に発表しています。
画家ではなく、商業デザイナーという立場上では時代の要求に答える必要があるのは当然ですが、どの時代にも自分らしいデザインを作り続けることが出来たのは才能があってこそ。
Musta Ruusuの黒いバラを見ると、ただ見たまま描いたのではないデザイン的な完成度というものを感じます。得意な分野で得意なタッチを使い、正に本領発揮といったところでしょうか。
この絵を描いているとき、楽しかっただろうなあ、と。カップにプリントされたものを見たとき、嬉しかっただろうなあ、と想像してしまうほど、バラが生き生きとしているのですから。
フクヤとしては珍しく、結構大人っぽい印象のこのカップに魅かれたのは、カップ全体から訴えてくるデザインの喜び、と言うものを感じたからかもしれません。
このカップ、(できれば・・・)今日中にアップ予定です。私も早くご紹介して、皆さんと喜びを分かち合いたいのですが・・・。(いつも弱気ですみません)
ミタ
うーん、音楽のことは分からないので、この話はこれで以上です。

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