フィンランドで珍しい白猫の置物を見つけました。
裏には「Helsinki 1947」「AS」とあります。Helsinkiはもちろん、ヘルシンキ。1947は製造年なのは間違いない。では、ASとは何なのか?
手元の資料を開くと、同じ猫の色違いが掲載されています。写真には作者名なし。
同じ資料の巻末にはサインと作者名の対応表がありました。これによると、ASはAune Siimesとあります。
Aune Siimes(アウネ・シーメス)は1909年生まれ。美術学校を卒業の1932年からアラビアのアート部門で、Greta Lisa Jäderholm-Snelmann (グレタ・リサ・イェーデルホルム=スネルマン) のアシスタントとして働き始めます。
ところで、グレタ・リサ・イェーデルホルム=スネルマンについては以前取り上げました。とても魅力的な女性ですので、合わせてお読みください。
特別な日のデミタスカップ
閑話休題
アウネ・シーメスに話を戻します。彼女はアシスタントを経て、初期の頃は動物のフィギュアや人形を多く作っていましたが、あるときイタリアからのお土産に感銘を受け、花の飾りを作るようになります。
やがて、その時に開発した独自の技術を生かした、ごく薄い磁器のボウルや花瓶で知られるようになります。残念ながら1964年に若くして亡くなりました。
ということで、矢張りこの猫の作者はアウネ・シーメスの初期の動物フィギュアの一つなのでしょうか。
不思議なのは、資料でも、ネットで検索しても、グレー猫はあるのですが、白猫は見つかりません。また、ネットで検索する過程で、作者を同時代の作家Michael Schikin(ミハエル・シルキン)あるいはLea von Mickwitz (レア・ヴォン・ミックヴィッツ) としているところもあり、はっきりしません。
ちなみにミハエル・シルキンの猫は下の写真(ぶさかわ)。レア・ヴォン・ミックヴィッツの猫は最初の本の写真の対面にある振り返る猫です。
白猫については、可能性として、
1、アウネ・シーメスの作品であり、何らかの理由でサインと年を入れた。例えば、プロトタイプや個人的な作品であった。この猫がアウネの作品と知られていないのは、初期の作品資料がきちんと記録されていなかった上、本人が早く亡くなったので分からないままうやむやになってしまった。
2、偶然アウネと同じイニシャルASの誰か、例えば絵付師や絵付けワークショップに参加した一般の人が、既存の猫のフィギュアに色付けをした。つまり、アウネの作品ではない。
の二つが考えられます。実際昔のアラビアでは絵付師の人が個人用に既存のフォルムに好きな絵を付けて焼いてもらう事もあったそう(大らかな時代だったのですね~)。また、絵付けのワークショップも開かれていたようで(現在もシールではありますが、絵付け体験ワークショップがアラビアでやっているようです)買い付けでも既存のフォルムに下手な絵を描いた珍品が現れます。
例えばこれ。
裏にはバッチリとアラビアのロゴ。
どう考えても、元ネタはライヤ・ウオシッキネンのカップ。
白猫は絵付けがしっかりとしているので、個人的には可能性の「1」と思っていますが、例え「2」だとしても素人の絵付ではないでしょう。
ぐにゃりとしたフォルムがいかにも猫らしくて可愛らしい。70年以上前につくられたこちらの白猫さん、12月12日に新着でアップしますね。
ミタ