デンマーク映画『アダムズアップル』悪魔っているの?

デンマーク映画『アダムズアップル』の試写会へ行きました。14年前公開ながら、このユニークな映画を紹介したいと配給担当者たちの情熱で実現した日本での上映です。

あらすじ
ある日、仮釈放されたスキンヘッド男のアダムが更生施設を兼ねる田舎の教会へ送り込まれる。指導役の聖職者イヴァンは 快く迎えるが、ネオナチ思想に染まったアダムは神も人の情けも信じていない。目標をイヴァンに問われたアダムは、「庭 のリンゴを収穫してアップルパイを作る」と適当な答え。しかし、この教会はどこかおかしい。同じ境遇にあるパキスタン移民のカリドとメタボ男のグナーは、更生するどころか暴力とアルコールに蝕まれている。聖職者のはずのイヴァンですら 現実逃避し、妄信的に神を愛することで自分を守ろうとしている。それを知ったアダムは執拗にイヴァンの自己欺瞞を暴こうとするが、時同じくしてアダムのアップルパイ作りを妨害するかのように奇怪な厄災が次々と降りかかる。それは悪魔の仕業か?それとも神が人間に与えた試練なのか……。

アダムズ・アップルLLP

日本には『盗人にも三分の理』という諺があります。泥棒にも犯罪を犯すそれなりの理由があるという意味。

犯罪者の過去を紐解くと、悲惨な体験が現れることは珍しくはありません。もちろん、同じような体験をしながらも、それを克服し犯罪に手を染めない人もいるのですから、過去に何があろうと犯罪は許せるものではないのですが。

デンマーク映画『アダムズアップル』に出てくる教会には更生のために元犯罪者が集められています。それぞれには、犯罪に手を染めたいささか自分勝手とも思える過去があります。そして、ある日そのメンバーにネオナチのアダムが加わります。

彼を迎えるのはマッツ・ミケルセン演じる聖職者イヴァン。穏やかに(しかしどこか奇妙に)神の愛を説くイヴァンに対し、新入りのアダムは根っからの『悪党』。更生のために教会に来ているのに、気に入らないことがあるとイヴァンのことを殴る蹴るの暴力。

いや、しかし、なんだかおかしい。

イヴァンはどんなに殴られようが蹴られようが、何も起こらなかったような態度だし、同居の元犯罪者たちが、ちっとも更生していないようなのに、気が付いている素振りがありません。

そのイヴァンの様子が何だか変すぎて、むしろ『悪党』のアダムの方がまともに見える瞬間も。

やがて、アダムはイヴァンもまた悲惨な過去を持っていると知ることになります。イヴァンは犯罪者にはならなかったけれど、耐えがたい事実から目を背け、何があっても”何もなかったこと”にしていたのです。

怖い!

過去の傷を克服できずに精神を病んでしまう方が、更生が難しそうで恐ろしい。

ただでさえ厳しい現実のさなかにいるイヴァンには、更に辛い運命が襲いかかります。イヴァンはどうなるのか、アダムは?ちっとも更生していない同居人たちは?

物語は思ってもいない方向へ進み、ラストは意外やハーピーエンド!

重いテーマをブラックユーモアに包み、試写会会場では時には笑い声も上がる程。ブログのサブタイトル”悪魔っているの”かどうかは、わたしが観終わってから考えさせられたこと。悪魔は外から襲いかかるのではなく、内側から作られるものかのかも。皆さんはどう思われるでしょうか。

新宿シネマカリテ10月19日(土)を皮切りに全国順次公開です。詳しくは公式サイトをご覧ください。
作品公式サイト:www.adamsapples-movie.com

作品情報
監督・脚本:アナス・トマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン(イヴァン)、ウルリッヒ・トムセン(アダム)、パプリカ・スティーン(サラ)
配給:アダムズ・アップルLLP
2005 年/ デンマーク・ドイツ合作/ デンマーク語/94 分/ 英題:Adam’ s Apples

ミタ

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