この印象的な装飾のカップはスウェーデンGefle製、Variant(ヴァリアント)シリーズです。このオリーブグリーンと紫のほかに青を含めて、色は全部で3色。これは300cc入る大きなサイズですが、他にコーヒーカップサイズもあります。
現在サイトにあるのは紫のものだけですが、写真のオリーブグリーンも入荷しました。ただし、ソーサーは失われています。とはいえ、これだけ大きなカップですからマグとしてお使いいただけるでしょう。クラシックなパターンですが、意外と時代は新しく、製造は1960年から1964年です。
デザインをしたのはスウェーデンデザインに大きな影響力を持ったArthur Percy(1886年-1976年)。英語読みでアーサー・パーシーと表されることもあるのですが、スウェーデン語読みではアルテュール・ペルシィかな?どうも北欧語は上手くカタカナに現わすことが出来ない上に、読める人が少ないので英語読みが定着しがちです(Stig Lindberg/スティグ・リンドベリもスティグ・リンドバーグと英語読みの時代もありました)。
さて、カタカナ表記を諦めて、Arthur Percyは美術学校で学び、アーティストとして活躍していた1923年にGefle社に入社しました。それはスウェーデン製造業においては、初の社内デザイナーの一人だったとか。
当時のデザイン界はアールデコの真っ盛り、Percyもまたアールデコのデザインを得意とし代表作やヒット作を次々に生み出して、国内外で様々な賞を受賞します。
6年前もフクヤ通信で書きましたが、このVariantシリーズは1960年代にも関わらず、アールデコの影響を色濃く残しています。1960年代当時の人にとっては、もしかしたら「懐かしい、若い頃流行ったわ」なんて事もあったのかも知れませんが、手馴れたバランス感覚にはゆるぎなく、当時も新鮮さを持って受け入れられたのでは無いでしょうか。
Variantとは「変形、変異」という意味。このデザインのどこに変異があるのか、見る人によって解釈は異なるでしょう。どこか目の錯覚を誘うようなパターンは今でもクールで印象的。見るたびに、ああ、と発見があり、いつまでも楽しんでいただけるシリーズです。
ところで、Arthur Percyは画家としても活躍しました。デザインの仕事は年に3ヶ月だけ、残りの日は絵を描いて過ごし、晩年の10年間は絵だけを描いていたとか。この頃のデザイナーは最終的には画家になる人がわりといらっしゃいますね。
ミタ
余談ですが、ブランド名のGefleはスウェーデン語の読み方では”イェフレ”。でも、これでも耳で聞くとちょっと違う。本当にカタカナ表記は難しいです。