ふわふわまるまる

おはようございます。毎日暑いですね。涼しげな色のプレートを選ぶと、せめて目からでも清涼感があるかもしれません。
手前の青の柄が付けられたディーププレートは、フィンランドのアラビア製。シリーズ名はPajuです。Pajuとはフィンランド語で”柳”のこと。名前も涼しげですね。

100703-1.jpg

Pajuシリーズは買い付けに行ったとき、しばしば見かけるのですが、今までは何となく好みに思えなくて手が出ませんでした。ところが、今回の買付で見たとき、やけに惹かれてしまいました。
持ち帰って、改めて見て、やっぱり正解だったと思っています。手彩色で付けられた青の色の変化がなんとも美しく、濃いブルーはどんなメニューでも引き立ててくれそうです。
仕入れたものは必ずその背景を調べるようにしているので、今回もPajuについて、日本やフィンランドのサイトや本をあたってみました。ネットで検索したときに、主に日本のサイトではデザイナーとしてUlla Procope(ウッラ・プロコペ)の名が書かれていました。

100703-2.jpg

もちろん、それは間違いではなく、このフォルムは1960年にプロコペがデザインしたものです。けれども、このPajuシリーズは1970年から1972年まで作られていますので、1968年にプロコペが亡くなった後の生産です。
このバックサインを見れば分かるように、プロコペのフォルムにデコレートデザインをしたのは、AJさん。Anja Jaatinen-Winqvistです。Anja Jaatinen-Winqvistは、夫のPeter Winqvistとの共同作の、例えばTaikaなどが有名ですが、自身も主にアート系の陶芸作品を多く作り出しています。
また、あまり多くないのですが、アラビアでデコレートデザインも手がけ、その少ない作品の一つが、この柳の絵柄のPaju。そしてその後ろに置いたPauliinaシリーズです(フォルムデザインはカイ・フランク)。
彼女について色々調べたのですが、人柄などが分かるような面白いエピソードを見つけることは出来ませんでした。分かった事といえば、1934年生まれ(夫のPeterの7歳上)、1955年にTaideteollisuuskeskuskoulun(英語:The Central School of Applied Arts)を卒業後、1974年までアラビア勤務、1974年から1991年までペンティック社勤務、という沿革だけ。
それでも、この2枚のプレートを見ると何となく彼女の好みが、ふわふわまるまるなのではないかなあ、と思い、こんなラブリーな柄を好んで描いた彼女も、ラブリーな人柄だったのではないかなあ、と勝手に想像しています。
こちらのPajuディーププレートは今月中にアップ予定です。昨日洗い終わったので、多分再来週には・・・・。
さて、フィンランド語が分からない私にとって、その長さに見ただけで気持ちがなえそうになる、Anjaの母校、Taideteollisuuskeskuskoulun。その後、Taideteollinen korkeakoulu(英語:University of Art and Design Helsinki、日本語:ヘルシンキ芸術デザイン大学)と短くなりました。
今年の2月にデザイナーの梅田氏と話をしていたとき、たまたま彼の母校でもある、そのヘルシンキ芸術デザイン大学の話が出、「今年からアアルト大学に名前が変わったんだよね」と教えてもらいました。
なんでも今年(2010年)、ヘルシンキ芸術デザイン大学、ヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学の3つの大学が合併し、新たにAalto Universityと名を変えたのだそう。
アアルトとは言うまでもなく、フィンランドデザインの巨匠、アルバ・アアルトの名前です。公立大学に個人の名前を付けることに意表をつかれたのですが、梅田さんの話を聞くうちに何となく納得できました。
梅田さんによると、フィンランドデザインの面白さとは、デザインをするだけでなく、それが量産できるものか、販売価格はどうなのかと、流通に乗るまでを考えていることなのだそうです。
ですので、芸術系、工業系、経済系の大学が合併するのは、デザイン→製造→販売を一つに考えるフィンランドらしい発想なのだとか。
一方大学名になった、アアルトはデザインする際に工業生産性や価格を抑えることを考慮し、合板による椅子のシリーズを生み出し、かつ自身の製品を販売する会社アルテックを設立しました。
つまり、この大学が目指すところをアアルトは既に実践していたのですね。
奇しくも2009年にヘルシンキが2012年のWorld Design Capital(世界デザイン首都)に選定されました(毎年変わるそうです)。そして、今年の初夏、最初のアアルト大学の卒業生が生まれました。2012年にはもう彼らの活躍が見られるかもしれません。これからのフィンランドデザインの新しい風が楽しみですね。

ミタ

【この記事をシェア】

コメントを残す

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る