おはようございます。
先週、スウェーデンから美しいポットが入荷しました。
Marianne Westman(マリアンヌ・ウエストマン)がデザインした、Rorstrand社のMon Amieシリーズです。
1928年生まれのウエストマンが、このデザインを発表した1952年は僅か24歳。Konstfack美術大学在学中に既に才能を認められていた彼女は、1950年にRorstrand(ロールストランド社)に抜擢され、入社していました。けれどもMon Amieをデザインするきっかけとなったのは、まだ大学在籍中の出来事だとか。
そのときの様子を語った、ウエストマンのスウェーデン語のインタビューを見つけました。そこから興味深いところを抜粋します。
ウエストマンがKonstfackに在学中のある年の夏至、彼女は父親のサマーハウスで過ごしました(あるいは、例年そこで過ごしていたのかもしれません)。夏至はスウェーデンではクリスマスに次ぐ、大きなイベントです。人々は花や葉で飾った、ポールを広場の中央に立て、その周りを歌って踊って周ります。
こちらは、以前スウェーデンのエヴァさんに送ってもらった、夏至祭の様子です。冬が長く暗い北欧の人たちにとって、一番昼が長い夏至の日は本当に嬉しいのですね。
詳しい様子はこちらの記事からどうぞ。
→2007年7月2日の記事
このエヴァさんの写真でも雨が降っているようですが、ウエストマンが父親のサマーハウスに滞在したその年も、やはり雨だったのだとか。
雨が降っていたんですよ。
それで、とても踊る気になれなくて、代わりに家の中でスケッチをすることにしたんです。
そのとき、ウエストマンをひきつけ、スケッチのモチーフに選ばれたのは、このSkvattramと言う名の可愛らしい白い花。日本語ではイソツツジといい、ツツジの仲間らしいですが、ずっと小さいようです。
「イソ」は「エゾ」からの転化らしく、磯とは何の関係も無いとか。エゾというくらいですから、寒冷地に自生している植物なのでしょう。
写真を見ると、おしべが花の中心から、ぐっと外に飛び出している様子が、Mon Amieのデザインに面影は残ってはいますが、彼女は、その白い花を青で描き、まるで蝶が羽ばたくようなフォルムと、ほとんど違う花のように作り替えました。
私は、自然の形を一旦消し去り、それを単純化、図案化するのが好きなんです。
このシリーズはスウェーデン国内だけでなく、海外でも大変に愛され、製造期間は1952年から1987年と、35年に渡ってのロングセラーでした。ウエストマンは、このデザインにより、国際的な賞で、金メダルを5つ、銀メダルを1つ取りました。
イギリス、ロンドンでの展示会の際には、マーガレット王女の夫であり、王室写真家のスノードン伯爵が「今まで作られた中で、もっとも美しい食器セット」と述べたそう。
と、書くとまるで順風満帆なサクセスストーリーのようですが、当時はまだまだ伝統に縛られた男社会で、若い女性が自分の意見を通すのは大変なことだったようです。
最初の頃は全くなじめなく、抵抗を感じていたものです
当時のロールストランド社内では難色を示されたにも関わらず、Picknickシリーズなどの彼女の作品は、市場にだされるや、結局のところスウェーデンの人々に大変な支持を得ることとなったのです。
彼女は、1971年に21年間過ごしたロールストランドを去り、ガラスメーカーSkrufsに移ります。そこで5年間ガラス製品をデザイン。その後ドイツの陶磁器会社にデザインを提供したり、テキスタイルデザインをするなど幅広い分野で活躍することとなります。
戦後の20年間、ヨーロッパでニ番目に古い陶磁器会社、ロールストランドを爽やかに駆け抜け、新しい時代を作り上げた、一人の若い才能。
Mon Amieは、その彼女のように、爽やかな風を感じる清清しいデザインです。
ミタ
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シェイクスピアの「A Midsummer Night’s Dream」の「Midsummer」とは夏至のことなのですが、長く「真夏の夜の夢」と誤訳されていました。最近になって「夏の夜の夢」と改題されたそうですね。
この青いお花がどれだけ多くの人を幸せな気分にしてきたことでしょう。躍動感のあるデザインに若い女性の柔軟な感性を感じて♪見ているだけで♪私もとても幸せな気分です♪
>>もももままさま
本当に!踊るような動きと同時に品の良さも感じますよね。最近復刻が出ましたが、もっとカジュアルなフォルムになっていて、そこに時代の移り変わりも感じます。