マリアとその家族


こんにちは。
先週スウェーデンから、美しいクリスマスプレートが入荷しました。
メーカーはGustavsberg、デザインはスティグ・リンドベリです。
このアートクリスマスプレートは、1981年の”Flykten till Egypten(エジプトへの逃避)”とこの1982年の”Maria(マリア)”のたった2枚しか作られていません。
詳しい事情は分かりませんが、1982年にリンドベリが亡くなったのが、3枚目が作られなかった理由なのかも知れません。なので、このプレートはリンドベリの最後の作品のひとつと言えるでしょう。
さて中世以来、聖書の物語は西洋絵画において、重要なモチーフのひとつです。アートに限らず、現在でも映画や小説などで、聖書を暗喩させるような物語は数多く作られていて、聖書の内容を知っているか知らないかで、その作品に対する理解度がかなり違ってきたりします。
また、西洋人と接しているとキリスト教的発想を肌で感じることもしばしば有り、聖書の内容を少しでも知っていると、彼らを理解するのに少しは役に立つのではないかと思っています。
かくいう私は、宗教的関心はあまりないのですが、学校で西洋美術史を7年間も勉強するうちに自然に聖書の物語について覚えてしまいました。
なんせ「西洋美術史=キリスト教絵画史」と言うところも有り、宿題に”受胎告知の絵画を集め解説する”なんていうのもあったくらいですから。
こちらの写真のプレート”Maria”はいわずと知れた、イエスキリストの母マリアと幼子イエスキリストの像です。
いわゆる”聖母子像”と言われるものですが、一般的にマリアは、あくまでも高潔に初々しく描かれるのがお約束。なんせ14歳処女懐妊ですからね。
ところが、その聖母もリンドベリの手にかかればご覧のように、華やかで美しく、色気さえ感じる姿になります。ふっくらとした頬は、美しい子供を持った幸せで膨らんでいるようです。

こちらの”Flykten till Egypten”になると、なんかもう、一目見てあははーと笑ってしまいました。
これは、父ヨセフがヘロデ王の幼児虐殺を天使から告げられ、妻マリアと子イエスを連れてエジプトへと逃れるシーンです。
(ヘロデ王は王となる人物が生まれたと聞き、それを阻止すべく2歳以下の幼児を虐殺したという話です。史実は違うそうですが。)
状況としてはかなり切羽詰っていて、ほとんどの絵画では深刻な顔をした3人が、人目を避けるように旅をしている場面として描かれているのですが・・・。
この絵はなんて楽しそうなのでしょう!
花の飾りが付いた帽子をかぶったヨセフは、ロバの背に揺られ、嬉しそうな顔をしたマリアとイエスを暖かく見つめています。
まるで、これからピクニックに出かけるかのような、楽しそうな表情です。写真では写っていませんが、二人を乗せたロバのお間抜け面もかなりのものです。
そして、この気楽な表現がこのシリーズの最たるもので、また、このプレートを単なる聖書の物語にとどめない理由なのです。
聖家族を高潔で近寄りがたいものではなく、まるでどこかに本当にいるような家族として描き、ユーモアさえ感じる表現は、普通の家族の愛情を感じさせます。
普通の家族として描くこと、これがこのプレートに宗教を越えた普遍性と、時代を超えた永遠性をもたらしているのではないでしょうか。
美しく暖かい愛情を感じるプレート、新しい家族を持った人へのプレゼントにしても素敵です。
ミタ

中世の聖母子像で、イエスが縮小された大人のプロポーションで描かれていることに、違和感を持ったことはないですか?これはイエスは生まれながらに完璧であるという意味なのだそうです。
ヘー × 8。

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