ロールストランド博物館は案外小さく、展示物はそれほど多くはないのですが、290年近い製品とその製造方法について丁寧に紹介した展示に好感の持てる場所です。
例えば、こちらは19世紀後半のアートピース。右の水色の壺はAnna BobergによるPåfågelvasen(孔雀壺)。孔雀の立体的な姿が表面を覆っています。
20世紀に入ってからの作品。20世紀初頭のアールデコから、1980年代のSigne Persson-Melin(シグネ・ペーション=メリン)のティーポット(右奥)やInger Persson(インゲル・ペーション)の同じく80年代を代表するレモンの大皿(左手前)と名作の数々が時代を区別せずに置かれていました。
こちらは左側が主に1950年代に活躍し、ロールストランドのアートディレクターも務めたCarl-Harry Stalhane(カール-ハリー・スタルハネ)の作品。右側がBirger Kaipiainen(ビルゲル・カイピアイネン)の作品です。
ビルゲル・カイピアイネンと言えば、アラビアのパラティッシなどを手掛けた、フィンランドのアーティストですが、1954年から58年までロールストランドに呼ばれ作品作りをしていました。
当時のアラビアはカイ・フランクがアートディレクターとして機能主義デザイン(装飾を省いた簡素なデザイン)を推し進めてた時代でした。機能主義とは対極にある装飾的で派手なデザインを好んだカイピアイネンは、むしろロールストランドで歓迎され、ロールストランドはアメリカで彼のために個展も開きました。
その展覧会のパーティーでは金色に全身を塗ったアフリカ系の男性がキャビアを運ぶという、カイピアイネン好みの派手な演出もされ、会場には「グレタ・ガルボ以外は」全てのセレブが集う大々的なものだったそうです。
閑話休題
こちらは、1960年代のロールストランドを象徴するといわれる、Inger Persson(インゲル・ペーション)のPOPシリーズのティーポットです。鮮やかな色彩の組み合わせはまさに60年代的。右下には、そのカラーバリエーションのタイルが展示されています。
良く知られていることですが、このユニークなフォルムの発想は、窯から出されたポットが潰れているのを見たことからだそう。
きっとこんな風に…。
これはHertha Bengtsson(ヘルサ・ベングトソン)のKoka(コカ)ですね。いったい窯の中で何が起こったのでしょう。棚が崩れてしまったのか、見事引っ付いて潰れ、大きな塊となってしまっています。
この展示は見学用に残してある窯のコーナーでされていました。こういったユニークな展示が見られるのも、元工場ならではです。
銅版絵付けを紹介したコーナー。壁も天井も一面がエッチングを施した銅版で覆われています。
銅版絵付けとは紙に銅版で印刷したものを陶磁器に張り付けて絵を転写する手法で、ロールストランドでは1760年代から始まりました。
手描きに比べて大量生産が出来る利点がありましたが、やがて新しい技術に取って代わり、1980年代にその生産方法は終わりを告げます。
大量生産向きとはいえ、銅板を手で彫り、紙に印刷しているわけですから、現在のプリンターに比べ手がかかっているのは間違いありません。
こちらは、トップの写真でも使っている、ゴム判絵付けを紹介するコーナーです。解説が見当たらなかったので、詳細は分かりませんでしたが、ロールストランドのビンテージがお好きな方ならピンと来るのではないでしょうか?
1960年代、70年代の多くのロールストランド製品にはゴム印で黒の連続模様を付け、手彩色で色を加えているものが見られます。その技法に使った道具です。
大量生産を目的としているので、日常の用品に多く使われましたが、手彩色されている分だけ、現在の製品よりも手がかかっていると言えますね。
そして、最後の仕上げ、彩色と釉薬について紹介したコーナーです。
分かりやすく番号を付け、並べた色見本はこれだけでも一つの作品のように見えます。
展示品は他にもフィギュアの型やお皿を成形する機械、石の塊が製品になるまでのプロセス、当時の作品のアイデアスケッチなどあったのですが、書いていて息が切れてきたので、博物館についてはこれで終了します。また余力があればご紹介します。
というわけで、次回は素敵なミュージアムカフェとイッタラアウトレットショップ、可愛らしいLidköping(リドヒューピン)の街並みとスウェーデン最大の湖であるヴェーネルン湖について書いてロールストランド博物館編は最後にするつもりです。
ミタ
レトロな1967年にインゲル・ペーションが作ったトイレサインの先には…
こんなモダンなトイレが!扉を開けた途端ギョッとしましたが、便器はグスタフスベリ製でデザイナーサインが入っていました。
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