スウェーデンでは、かつて8月の第1水曜日がザリガニ漁解禁でした。つまり、今年は一昨日の8月5日でした。解禁から数か月続く漁の時期は各家庭でザリガニを食べるパーティ「Kräftskiva(クレフトフィーヴァ)」が開催されます。現在では漁の規制は無くなったそうですが、スウェーデンでは8月は今もザリガニを食べる月。
何故か、ザリガニにはチーズパイを合わせるのが伝統で、しかもそのチーズパイに使うチーズは北部のヴェステルボッテン(Västerbotten)で作られるヴェステルボッテンチーズでないといけないとか。ざっくり調べたのですが、理由が分かりませんでした。丁寧に調べれば分かるものでしょうが、まあ伝統とはそういうものと、ここでは誤魔化しておきます。
さて、ザリガニは無く、ヴェステルボッテンチーズも手に入りませんが、季節ものだしと、日本で手に入るチーズを使って、スウェーデンのレシピでチーズパイを焼きました。具にはチーズだけでなく、スウェーデンで買った乾燥キノコも入れてアレンジしたので、正確にはキノコとチーズのパイ。適当に作った割には美味しかったです。
プレートはスウェーデンのブランド、ウプサラ・エケビィ(Upsale-Ekeby)のシルヴィア(Sylvia)です。ウプサラ・エケビィは1886年創業。20世紀に入ると、次々と同業社を吸収合併してUEグループとして大きくなります。かつてはロールストランド社もUEグループの傘下でした。しかし1960年代から経営が悪化し1973年に閉鎖。シルヴィアシリーズはロールストランドと同じくUEに吸収合併されたカールスクローナ(Karlskrona)の製品です。
派手さを押さえた柔らかな色で葉っぱ柄が描かれ、どこかエレガントな雰囲気は、カールスクローナの他の製品にも見られる特徴です。デザインはBarbro Lofgren-Ortendahl。バルブロ・ロフグレン=オルテンダール、と読むのでしょうか?1918年生まれで、1940年に美術学校を卒業後、しばらく広告会社でイラストの仕事をします。カールスクローナに所属していたのは1962年から1969年。シルヴィアは1963年から作られ、人気があったのでしょう、シリーズ全体で63ものアイテムがあります。
バルブロはカールスクローナにいた時期を除き、生涯のほとんどを田舎のコテージで過ごし、自然の中の草花から作品のアイデアを得ています。
このGrobladも彼女の作品で、モチーフになっているのはオオバコ。いわゆる”雑草”と言われる、オオバコをモチーフに取り上げるところが、自然を愛したというバルブロの人柄を物語っています。
シンプルながらオオバコの特徴をとらえているのは観察のなせる業ですね。そういえばシルヴィアのモチーフになっている葉っぱは、まるで植物標本のように並んでいます。恐らくちゃんとモデルがあり、詳しい人が見れば何の木の葉なのか分かるのでしょう。
話は変わりますが、今回の写真を撮るにあたって、著書「北欧 食べる、つくる、かわいいと暮らす」のレシピ撮影の時にカメラマンの大石道博さんに教わったアドバイスを思い出しながら撮ってみました。美味しそうに見えるでしょうか。合格をいただけますように。
ミタ
大石さんのあまりにも突然で早すぎる死去に哀惜と追悼の気持ちを込めて。