おはようございます。
この写真のポットは1950年代のスウェーデン製魔法瓶、「TV Kanna」です。どうもスウェーデンでは魔法瓶を総称でTV kannaと呼ぶようで、この名前イコール、この50年代のカゴ付きポットを指すわけではなさそうです。
とはいえ、今回はちょっと意識して同じくスウェーデンGustavsberg社の1950年代のコーヒーカップGrillと合わせてみました。ついでにテーブルランナーもミッドセンチュリー風(IKEAで購入)を選んで組み合わせ。
さて、昨日「この魔法瓶についてはまた明日」なんて予告しましたが、実はあまり詳しいことはわかっていません。とりあえず、昨日までに調べて分かっていることを、いくつか。
まず、昨日書いたとおりTV kannaの「kanna」とはスウェーデン語でポットのことです。
では「TV」とは?
これは、一般的にはテレビのこと、と言われています。よくあるTVセットと同じですね。つまり、テレビが普及し始めた頃で、テレビを見ている時にいちいち立ち上がって、コーヒーを淹れに行かなくても良いように、と言うわけです。
いろいろ調べていると「私の村では”ラジオポット”と呼んでいたよ。この村にテレビが来たのはずいぶんと後の事だったからね。」なんてコメントもあり、なるほど、1950年代ではまだまだ一般家庭にテレビがそう普及していなかったのでしょう。
「あれ?じゃあテレビっておかしくない?」と思った方、もしかしたら正解かもしれません。
この「TV」にはもう1つ別の説があります。
当時の魔法瓶製造メーカー「AB Termoverken」のTVではないか、という説です。Termoverkenを日本語にするのは難しいのですが、無理に日本語にするよりもカタカナで「サーモ・ファクトリー」と(結構強引ですが)いったほうがイメージが伝わるかな?
カゴ付き魔法瓶には、この写真とは別に、底がプラスチックの少し細身のものがあるのですが、それにはAB Termoverkenの社名が入っているものがあるはずです。もしお持ちの方はちょっと確認してみるのもいいかもしれません。
さて、この写真の太い方(底が金属で同じく金属の小さな足が付いています)は、というと「June」と言うメーカーの物とアンティークショップでは説明されていましたが、ロゴも無くはっきりとは分かりません。(Juneという魔法瓶メーカーが有ったことは事実です)でも、これも「TV kanna」と呼びます。
例えば、電子ピアノをどのメーカーのものでも「エレクトーン」と言ってしまうように、ある年代の方はコピー機を「ゼロックス」でまとめてしまうように、特定の商品名がその類似品の総称になり、やがてその本来の意味が薄れてしまうのは良くあること。
もしかしたら、この魔法瓶にも同じことが起こったのかも知れませんね。
なんて調べていたら面白い物を見つけました。スウェーデンにある「魔法瓶博物館」です。YouTubeでアップされていたのですが、ホームページ代わりなのでしょうか、せりふもBGMもありません。分かるのは大量に魔法瓶があることと、”入場料は寄付金です。どうぞよろしく”と言うことです。
いささか退屈かもしれませんが、良ければご覧になってください。
そうして、同じくいろいろと調べていたら、別のサイトにも当たりました。スウェーデンの方の個人のブログで、写真には80歳くらいの男性がTV kannaとアラビアのFloraコーヒーカップを前に座っています。
コメントにはこう有りました。
「父には毎日続けていることが2つある。1つは朝コーヒーを沸かし、TV kannaに注ぐこと。もう1つはちゃんとジャケットを着ること。」
詳しいことは書いていなかったのですが、おそらく彼は50年間同じことを続けているのでしょうね。彼の前に置かれたカゴ付きポットもカップも彼と一緒に年月を重ねたのでしょう。50年前は職場に持って行ったかも知れない魔法瓶は、今はその老人が庭でくつろぐときにお供しているようでした。
ミタ
..
魔法瓶博物館のYouTubeは全4巻。
長いよ・・・。