小さいけれど存在感

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おはようございます。
フクヤは私の個人的な好みで、あまり無地のものは取り扱わないのですが、今回はどうしても手にとってしまった白いボウルがあります。
白といっても真っ白ではなく、どちらかというと柔らかい乳白色。するんとした質感で、使用感はありません。両手に抱えるほどの、かなり大きなサイズで、直径23cm、高さは13.5cm。厚みがあり、重さは約1.3キロです。

このボウルが気になった理由はただ一つ。底近くの側面に記された手書きのサインです。

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無理のない滑らかなラインを目で追うと、最後にくっと引っかかるラフな文字は、全体を引き締め、癖のないフォルムに個性を与えています。
書かれている文字は「GOG/JL ARABIA」です。ARABIAはフィンランド、アラビア社のこと、GOGとは同社のデザイナーGunror Olin-Gronqvist(グンヴォル オリーン グレーンクヴィスト)の頭文字です。
不思議なのはJL。このJLとはこの製品にデコレートをしたデコレーターの頭文字。つまりこの手書きのサインはJLさんによって書かれています。
でも、デコレートは何も施されていないのです。

*アラビアの手彩色によるシリーズにはバックスタンプの代わりに手書きによるサインが書かれています。例えば、このValenciaデミタスカップのサインの「UP/NS」は「Ulla Procopeがデザインし、NSが絵付けをした」という意味で、その全てはNSさんによって書かれています。
ところで、このデザイナーの頭文字は、時にはフォルムデザイン、時には装飾デザインをした人になっているので、そこら辺の線引きはどうなっていたのでしょうね?
ちなみに、時代や製品によりロゴがスタンプの場合もあります。
閑話休題

さて、このボウル、買い付けたアンティークショップによると「初めて見たから良く分からないけれど、プロトタイプ(試作品)なんじゃないかな?」とのことでした。
Gunror Olin-GronqvistはUlla Procope(ウッラ・プロコペ)がフォルムデザインをした、コスモスシリーズのデコレートなどで知られていますが、自身でフォルムデザインからデコレートデザインまで手がけた作品がいくつもあります。このボウルもフォルムデザインだけでなく、装飾まで計画されていた可能性があります。
色々と調べてみたのですが、これと同じフォルムのものを見つけることが出来ませんでした。もっと調べれば何か分かるかもしれませんが、もしかしたら製品化されなかったのでしょうか。
いったい、Gunrorはこの大きなキャンパスに何を描く予定だったのか、大胆な筆致で描く抽象的なパターンから繊細で描写にこだわった絵柄まで、守備範囲の広い彼女でしたから私には想像も付きません。
けれども、このボウルは小さなサインが見事な装飾として成り立っていて、不思議とそれだけで完成品としての存在感があり、これはこれでいいんじゃないか、と思えるのです。


ミタ

ボウルに入っているリンゴはヨーロッパでよく見る、小ぶりなものです。
モデルハウスでは一回り小さな家具を置いて部屋を広く見せている、との噂が。
それと同じ、ボウルを大きく見せるためのテクニック・・・。

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