
9月10日から大阪高島屋で開催されている『スティグ・リンドベリ』展へ行ってきました。入場するとすぐに目に入ったのは、リンドベリの最初の作品と最後の作品。展示全体が彼の生涯の仕事をテーマにしていることが一目で伝わる、ワクワクするような仕掛けでした。
こちらはリンドベリを代表する『Berså』の展示。現地の発音では「ベショオ」ですが、日本では別の呼び名が付いています。私が仕事を始めたころは「ベルソ」と表すこともありましたが、現在は「ベルサ」で統一されていますね。

手前はコレクター垂涎の「タヒチ」シリーズ。中央は青と赤の「アスター」、奥には「チュールチュール」や「リビエラ」が並び、いかにもリンドベリらしい個性的なデコレーションが楽しめました。

H55エキシビションのために作られた「ドミノ」シリーズ。朝一番に行ったおかげで人も少なく、ゆっくりと鑑賞できました。

長年にわたる研究の末、成功を収めたファイアンスのシリーズ。

その後、ファイアンスが下火になる中で起死回生を狙ったのが「カーニバル」シリーズです。しかし、プリントされた線の内側を塗るだけという創造性の乏しい作業が続いたため、多くの絵付師が去るきっかけにもなったというのは知っていたのですが、展示の解説で紹介されていた、ただ一人最後まで残った絵付師の話は初耳で、とても心を打たれました。

テキスタイル作品の展示もありました。

こちらは、妻のグンネルがリンドベリの絵をもとに織り上げた作品です。この制作を終えた直後に彼女は亡くなったそうです。グンネルは結婚して間もなく病により車椅子生活となり、そのためリンドベリが子どもたちの世話をよくしていたと伝えられています。

こちらは子ども用食器「ベイビー」のデザイン原画。描かれたゾウの親子は父と子に見えます。現在のスウェーデンでは父親が子育てに参加するのは当然のことですが、これが描かれた1951年はそれほど一般的ではなかったはず。もしかすると、この父親に見えるゾウには、実際に子育てに関わっていたリンドベリ自身の姿が重ねられているのかもしれません。

こちらは実現しなかった「長くつしたのピッピ」の挿絵案。

昨年、西宮で開催された「絵本原画展」にも行きましたが、現在は原画がデジタル処理され、印刷との違いがなくなっているため、やや物足りなさを感じました。やはり手描きの原画には特別な魅力がありますね。
今回の展示では、接近したり離れたりしながらたくさん写真を撮りました。それはブログやSNSに載せるためというよりも、自分のために記録しておきたかったからです。

これまでにもいくつかのリンドベリ展を訪れてきましたが、今回ほど夢中になって鑑賞したのは初めてでした。

仕事を離れることになって(フクヤは今年いっぱいで閉店します)、いつも半分仕事の気持ちで見ていたのが、少し客観的になったことも影響しているかもしれません。リンドベリの作品は、とても一人の人物が生み出したとは思えない多様性があり、あらためてその才能に圧倒されました。
大阪高島屋でのリンドベリ展の詳細は下記の通りです。
会場・日程
大阪高島屋 7階グランドホール
2025年9月10日(水)〜9月21日(日)
ご入場時間:午前10時〜午後6時30分(午後7時閉場)
https://www.stiglindberg-exhibition.jp
ところで、「フクヤを閉店した後、ブログやSNSはどうするのですか」と尋ねられることがあります。フクヤは終わっても北欧との縁が切れるわけではありませんので、これからもときどき近況を書く場としてブログは続けていこうと思っています。