8月8日からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次ロードショーが始まるスウェーデン映画「さよなら、人類」の公開前イベントへ、7月24日に行って来ました。
「さよなら、人類」
第71回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞
面白グッズを売り歩くセールスマンコンビ、サムとヨナタンが物語の中心となり、さまざまな人生を目撃する。サムとヨナタンの目を通して映し出されるのは、人類の現在、人類の過去、人類の未来。時代が移り変わっても、人間の本質はそれほど変わらない。喜びと悲しみ、希望と絶望、ユーモアと恐怖を、哲学的視点をスパイスにしてブラックな笑いに包み込む。人間であるがゆえの愚かさ、滑稽さ、哀愁、脆さを苦みとそこはかとない可笑しみ持って描きだす傑作。観る者は、作品の中に、自分と同じ誰かを見つけ出すに違いない。
(公式サイトより)
コピーライターで「北欧のおいしい話」など北欧にまつわる本を多く執筆している森百合子さんと、2011年から毎年冬に開催している北欧映画の祭典「トーキョーノーザンライツフェスティバル」代表の笠原貞徳さんが北欧映画の魅力について語るトークイベントです。
北欧の映画、といえば昔からの映画好きならスウェーデン映画界の巨匠イングマール・ベルイマンの数々の作品を思い受べるかも知れません。個人的には北欧映画とも気づかず学生時代に観た、スウェーデンの「マイライフアズアドッグ」、デンマークの「バベットの晩餐会」は忘れられない物語です。
あるいは、もしかしたら、北欧映画は観たことはなく、フィンランドを舞台にした日本映画「かもめ食堂」を思い浮かべる人もいらっしゃるかも。
森さんと笠原さんによると、北欧の映画は「かもめ食堂」のような(ああ、実はこの言葉は好きではなく葛藤しながらもあえて使うと)”ほっこり”したものではないとか。
今や映画世界はボーダレス化し、各国の影響を受けているので、北欧映画の特色を一言で語るのは難しいとはいえ、あえて言えばリアルな日常を描き、社会問題をテーマにした”反かわいい”映画が多いそう。”幸せの国”だからこそ、裏に隠されたものをあぶり出し、人々に考えさせるのが映画の使命となっているようです。
なるほど、日常的に厳しい現実に向き合っているインドの映画が底抜けにハッピーなのとは真逆というわけですね。
さて、今回のテーマの「さよなら、人類」はどんな北欧を見せてくれるのか。
監督のロイ・アンダーソンは1943年生まれで、文学と映画の学位を取った後、1969年に「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」でデビュー。この作品はベルリン国際映画祭で賞を受賞しています。
寡黙な作家で、デビューから最新作の「さよなら、人類」を含め長編は45年間に5本しか撮っていません。長編映画製作の合間には短編やドキュメンタリー、そしてCMを作っているのですが、そのCMも賞を取るなど高い評価を受けています。
「さよなら、人類」は39の短いエピソードを積み上げて一つの物語に仕上げた映画です。驚いたのは、映画には脚本は無く、監督の描いた絵コンテを基に撮影が行われているとか。
広告の仕事に長く関わっている森さんによると「まさにCMの人、場面が瞬間的に心をつかんで、次に何が起こるのか目が離せない」、笠原さんは「映像美が素晴らしく、ストーリーを追うと意味が分からないけれど、絵を眺めるように観ていると分かってくる」。
この映画もまた、北欧映画らしく上手く行かない人々を描いているのですが、そこには自虐的なユーモアがあり、また弱者に優しい北欧らしい視点もあるのだとか。日本人の感覚にも似たアイロニーは異国の物語でありながら、きっと身近に感じ、共感するはずでしょう、とのお二人の話しでした。
さて、さて、私も公開前に観る機会を頂いたので、個人的な感想は次回に続く。
ミタ
P.S.笠原さんはスウェーデン映画祭を9月19日から25日まで渋谷のユーロスペースにて開催されます。
P.S.森さんの古着のドレスが可愛かったです。それから9月に新刊発売が決定したそうです。
さよなら、人類 A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence
監督・脚本:ロイ・アンダーソン(『散歩する惑星』『愛おしき隣人』)
出演:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム
2014年/スウェーデン=ノルウェー=フランス=ドイツ/カラー/100分
(c)Roy Andersson Filmproduktion AB
後援:スウェーデン大使館 提供:ビターズ・エンド、スタイルジャム、サードストリート 配給:ビターズ・エンド
www.bitters.co.jp/jinrui/