北欧から戻って、ややしつこい風邪に見舞われています。買い付けのレポートも記憶が薄れないうちに書き終えないとと思いつつ、なかなか手を付けられません。
買い付けの話は取りあえずさて置き(また!)今日は先に友人の森さんの新刊をご紹介します。この本も1週間ほど前に送って頂いたのにも関わらず、今頃になってしまいました。
表紙の写真からレトロ好きがグググと惹かれる魅力ある一冊「北欧レトロをめぐる21のストーリー」です。
タイトルには北欧、とありますがサブタイトルに「ストックホルムでみつけた古くて可愛いもの」とあり、その通りスウェーデンのストックホルムを中心に紹介されています。
北欧デザインの「黄金時代」と呼ばれる50年代、60年代の食器、クロス、ファッション、街並みに焦点を当て、丁寧に解説していると同時に、レトロデザインが買えるお店や体験できる施設やカフェなど、見るだけでなく実際に暮らしに取り入れる方法も紹介されているのが嬉しいところ。
さらにレトロデザインをインテリアやファッションで実践しているスウェーデンの人たちの姿は、「自分にもできるかも知れない」と思わせてくれるリアル感があり、撮影のためにコーディネーターが作った架空の世界では得られない充実感があります。
私の興味の中心の食器においては、本にも書かれている通り40年代までは他国(イギリスなど)の模倣をしていましたが、50年代に入り北欧デザインは独自の魅力で輝き始めます。特に色彩の美しさは際立ち、それはいつ終わるともしれない戦争から解放され、これから世の中は良くなっていくのだ、という希望の印なのかも知れません。
50年代は海外旅行など気軽に行ける時代ではありません。もちろん当時もフランスやアメリカなどで勉強をしたり、あちこちの国を見て回ったデザイナーもいますが、それでも雑誌や写真もテレビも白黒の時代で情報も限られていたでしょう。そんな中で北欧出身のデザイナーたちは生まれ育った北欧の自然からインスピレーションを受け、デザインを起こしたのではないでしょうか。
長く暗いモノトーンが支配する冬を持つ北欧の人にとって、夏になって一斉に開く花やベリーの実りはどんなに心を弾ませたことでしょう。デザイナーたちは、その色や形を冬の生活の中でも取り入れたいと願ったに違いありません。
そいういった意味で、北欧の北欧らしいデザインはレトロにあるのだと思っています。私にとってこの本はスウェーデンレトロの良さを再発見する一冊となりました。皆さまもこの本を手に取ったら北欧デザインにどっぷりとつかってみてください。きっと心をぐっと掴まれる何かがあると思います。
さて、先ほど”世界各国からデザイナーが集まるわけでもありません”と書きましたが、トップの写真の後ろに置いているモーニングカップはドイツ出身のデザイナーUrsula Printzによるものです。外国人である彼女をスウェーデンへと運んだのは、以前ご紹介したエストニア出身のマリ・シムルソン<と同じく戦争の恐怖からの避難、でした。
ドイツのヴァイオリニストの父とピアニストの母という音楽一家に生まれた彼女は、母親がユダヤ人だったため1939年の17歳の時に難民として家族でスウェーデンへ移住。その後グスタフスベリでデザイナーとして職を得て、1940年代には写真のモーニングカップの一連の作品で人気を博します。
1951年、スティグ・リンドベリの熱心な引き止めにもかかわらず、グスタフスベリを辞めてデンマークへと移ります。いつか彼女については別の機会に書ければと思っています。
ミタ
長くなったので書ききれませんでしたが、森さんが特に得意としている40年代ファッションの話も注目です。
フクヤのオリジナルコーヒー。北欧のシーンに合わせて選ぶ3つのブレンド。