こんにちは。
この鮮やかな水玉ケーキプレートはスウェーデンGefle(ゲフレ)のAmanita(アマニタ)です。まるでままごとセットのような愛らしさは、どこか懐かしく、見ると思わずニッコリとしてしまうのではないでしょうか。
アマニタとは日本語で言うテングダケのことで、真っ赤な笠に白い水玉模様が特徴。強烈な印象を与える外見のためか、特にヨーロッパでキノコのイラストやおもちゃのモチーフに良く取り上げられています。
イギリスの童話「不思議の国のアリス」でもアリスが座っていたのはこんなキノコではなかったかな?
不思議と言えば、このアマニタシリーズは現地でも人気があり、愛好者が多いにも関わらず、分かっていない点があります。
まず、製造年。そしてデザイナー。
資料をいくつか当たると、あるものには1939年から1947年とあり、あるものには1949年から1957年とあります。きっちり10年違います。ただ、どちらも私が信用している資料なので困惑してしまいました。
そこで、更に調査を進めると、どうも1939年としている資料にはどれも”デザイナー不明”とあるのに対し、1949年説を謳っている多くの資料にはデザイナーとしてHelmer Ringström(ヘルムト・リングストローム)の名が記されています。
ヘルムト・リングストロームは1916年生まれ。1938年にグスタフスベリに入社し、ヴィルヘルム・コーゲ(Wilhelm Kåge 1889-1960)の助手を勤めます。ちなみにコーゲはリンドベリの師匠でもあります。
1942年にGefle(ゲフレ)に転職し、退職する1979年までに、装飾部門の主任として400以上の装飾デザインと多くのディナーセットのフォルムデザインを手がけました。
と、ここで1949年説の一つの裏付けが出来ました。つまり、1939年にヘルムトはまだゲフレにいなかった。
けれども、もし”デザイナー不明”が真実なら、この根拠も揺るぐわけですが、スウェーデンのアンティーク掲示板に投げかけられた同じ疑問に、ヘルムトの甥、を名乗る人物が「確かに叔父のデザイン」と証言していました。
掲示板のアップは2009年。ちなみにヘルムトは長寿を得、2010年に94歳で亡くなっています。
さて、本当の所は分かりませんが、ただデザインの傾向として1940年代ではない気がします。
これはロールストランドとグスタフスベリの資料ですが、1930年代から1940年代はまだクラシックな植物柄が好まれていたことが分かります(1950年代に入ってからのデザインの変化には驚きます)。
1950年代にはこんなポルカドット柄のドレスも流行っていましたし、個人的には1949年、ヘルムト・リングストローム作、を支持しています。
さて、アマニタについて調べたきっかけは、日本の多くのサイトでデザイナーをArthur Percy(アルチュール・ペルシー)としていたからでした。
けれどもペルシーはアール・デコの作風で知られています。それを思うと彼の作品とは考えにくく、違和感が有ります。実際いくつか見たスウェーデンのサイトではペルシー説は見つかりませんでした(探し方が悪いのかも知れませんが)。
アマニタケーキプレート、現地ディーラーさんによるとこのようにプリントがきれいに残っているのは珍しい、とのことでした。中でも良いものを選んできましたので、是非ご覧下さいね。
ミタ
※追記(2014年7月)
5月の買い付けで入手した最新のスウェーデンビンテージの本で「Helmer Ringström 1949-1957」と記載がありました。かなり信頼のおける出版誌なので、当店ではそのように致しますね。
プレートの上に乗っているのはスウェーデン風パンケーキ。スウェーデンのパンケーキは薄いので、折ったり巻いたりしていただきます。