ラテン語で月という名のガラスボウル

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こんにちは。
デンマークのリスさんに教わったリンゴのデザートが美味しくて簡単だったので、また作りました。今回は目分量。適当な分量でも出来てしまうところが、長く愛されている秘訣なのかもしれません。
→デンマーク風アップルケーキ
さて、今回はデンマーク風に大きな器に入れて、取り分けるスタイルで写真を撮ってみました。撮影に使ったのは1970年にフィンランドを代表するデザイナー、カイ・フランクがデザインしたガラスシリーズ”Luna”の青いボウルです(発売開始は1971年)。
→Nuutajarvi/Arabia Luna ボウル (直径11cm)
ぼってりとした厚みのあるガラスで、柔らかい曲線を描いた優しい雰囲気の形です。単色の青に見えますが、日に透かすと濃淡の青が混ざり合い複雑な表情を見せてくれます。
Lunaとはラテン語で”月”の意味。月のような冷たさと温かさの両方を感じるデザインです。
ラテン語といえば、後ろにチラリと写っているガラスボウル、イッタラのUltima Thule(ウルティマ ツーレ)もラテン語の意味を持っています。以前も書きましたが、Ultima Thuleとは古いヨーロッパ言語で「知られている世界の境界線(最果ての地)」という意味で、特にラテン語ではグリーンランドを指すのだとか。
デンマーク領グリーンランドはその名に反して、大部分が北極圏に属し、80%が万年雪に覆われた極寒の地です。恐らくUltima Thuleのデザイナー、タピオ・ヴィルカラは氷の地を連想してこの名前を付けたのでしょうね。
Iittala製品でラテン語のシリーズ名は他にもあり、良く知られているところでは、シマシマの”Origo”もそうですね。Origoは英語のOrigin(起源、原点、基点、始点)の元になっていて、ラテン語では”始め”という意味です。
日本では「Origoはラテン語で中心を意味し、食事を楽しむことが暮らしの中心になるように」云々と解説されていますが、これは意訳?イッタラのサイトにも他の海外サイトにもOrigoの意味については何も書いていないので、よく分かりませんでした。物の始まりという意味で「中心」と解釈したのでしょうか。ちなみに中心(center)のラテン語はCentrumだとか。
日本人にはなじみの無いラテン語ですが、西洋では古語として学校で習う言語です。全ての学校ではないようですが、甥の通っているパブリックスクール(イギリスの私立校)ではラテン語をやらされるようです。彼の通っている学校は1552年創立の古い学校ですので、450年前から変わらずラテン語の授業があるのでしょう。
欧米の歴史ある学校では式典がラテン語で行われるそうです。家人の通っていたアイルランドの大学は、正式名称の”ダブリンにおけるエリザベス女王の神聖にして分割されざる三位一体大学”から分かるとおり、1592年にイギリスのエリザベス1世によって創立された、たいへん古い大学です。
そんなわけで、卒業式は伝統どおりラテン語で行われました。
家人は「何を言っているのか、さっぱり分からなかった」そうですが、名前を呼ばれたことはしっかりと理解したらしく、列席の父兄たちが拍手をする中、ちゃんと壇上に上がって前大統領から卒業証書を受け取っていました。
私も拍手をして家人が卒業証書を受け取るのを見ていたら、前に座っていた卒業生の母親らしき女性が振り返り、私に拍手を贈りながら「この卒業式はあなたの卒業式でもあるのよ」と言葉をかけてきました。知らない方でしたが、その学科の卒業生にアジア人は家人1人で、列席者の中でもアジア人は私1人でしたから、私が身内だろうと察したのですね(当たって良かったです)。
そのとき、全く知らない国に来て、周りに誰も知っている人はいず、言葉はほとんど分からず、簡単な意思を伝える事にも苦心し、かといって夜中まで勉強している家人には日常の瑣末な事まで手間を取らせることはできないので、自力で解決するしかなく、そんなこんなの思い出が走馬灯の様に蘇り・・・・
は、しなかったのですが、まあ、その一言にはかなり慰められました。洒落たことを言いますね。
1年余りの短い海外生活でしたが、その経験から外国語は出来るだけ正確に伝えよう、と気をつけています。北欧の食器名は未知の言語のためか、間違った日本語に訳されている場合があるのが残念だなあ、と思っています。手間を惜しまず調べれば分かることも多いのですが。
(ちょっと、愚痴)
では、良い週末を!
ミタ

ちなみに卒業証書もラテン語なので、何が書いてあるのか今だに分かりません。

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ラテン語で月という名のガラスボウル」への4件のフィードバック

  1. こんばんは。ちょっとご無沙汰しています。いつもうっとり拝見しています☆
    「手間を惜しまずに調べれば分かること」という件に、ドキっとしました。一応、ノルウェー語を生業にしているので、わかっていると疑わずに、実は間違った情報を流していたかも・・・とわが身を振り返っちゃいました(苦笑)。
    ミタさんの商品説明は、勉強されたのだな~という信頼性と愛情に満ちてますね。私も見習わないと・・・と襟を正したい気分です。3日坊主かも?てへっ。

  2. >>froskさま
    専門の方にそう言っていただけると、ちょっとドキドキ。
    数年前と違って、最近では北欧語→英語へならGoogle翻訳が本当に良くなったので、助かってはいます。ただ、意味が通らない場合も多いのですよね~。
    ノルウェー語の場合は以前はノルウェー大使館やヒルデさんに意味を聞いたのですが、これからはfroskさんに聞きますね!ふふ♪

  3. >>もももままさま
    お、さすがです。見つけましたね。
    あれは、ドイツ、メリタのプレートです。カップとかもっと大きいプレートとかと一緒にごっそり入荷したのですが、クリスマス物に押されてなかなかアップできません。でも、いずれそのうちに・・・。

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