フクヤに入ってくる商品には現地の生活や習慣を絵にしたものも多くあります。中には、ほのめかしや象徴的なモチーフだけが描かれているだけのものもあり、その国の人が見れば、すぐに何を表しているのか分かるものも、全く異なる文化に暮す日本人には分かりづらいものがしばしばあります。
この、デンマークのイラストレーター、Bjorn Wiinblad (ビヨン・ヴィンブラッド)によるマンスリープレートもその一つで、あるカップルの姿をデンマークの12ヶ月の自然と共に様々な場面で描いています。日本で生まれ育った私には、なかなか完全に理解するのは難しいのですが、どのような場面を表しているのか、なんとなく分かるものもあります。
いくつか私なりに解釈したものをご紹介しますね。商品説明にも同じことを書いているので重複になりますが、良ければお読みください。
最初は、2月のプレート「Maskerade(仮面舞踏会)」です。
仮面舞踏会といえば、皆さんはイタリア、ベニスのカーニバルを連想するのではないでしょうか?はい、それで正解です。
そもそも、カーニバルとはキリスト教にまつわるお祭りなのですが、キリスト教になじみの無い日本人には、宗教と結びつけて考えることは無いかもしれません。
キリスト教ではイエス・キリストの復活を祝う「イースター(復活祭)」の前の、四旬節と呼ばれる46日間は断食(英語でレント)をする習慣があります。もっとも現在ではよほどの宗教国以外では断食は行わず、また断食といっても自分の好物(子どもならお菓子とか)を我慢する程度らしいですが。
その断食の前日に「これからご馳走を我慢しなければいけないんだから、もう、みんなで全部飲んで食っちゃおう!」と始まったのが、カーニバル。これを日本語で「謝肉祭」と呼ぶのを聞いたことがあると思いますが、この”肉に感謝する”という訳は少し違うよう。元々はラテン語のカルネ・ウァレ(肉よ、さらば)という説があるそうですよ。
さて、このカーニバルの期間ですが復活祭が「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と決まっているために毎年日にちが異なりますが、大体2月の半ばからせいぜい3月頭くらいです。リオのカーニバルのイメージから暑い時期のような気がしますが、ブラジルは一年中30度近い暑さですし、南半球で季節は逆なのですよね。
と、そんなわけで、このプレートの仮面は2月のカーニバルの様子なのです。ただ、デンマークでこのような仮面をつける習慣があるかどうかといえば、聞いたことが無いのですが。2人はベニスに旅行に行ったのかも?
次は9月の「Saison Start(シーズンの始まり)」です。
さて、このシーズンとは何なのかを探るために絵に目を凝らしてみると、最初のヒントは裏にありました。
裏には表の絵にまつわるイラストがロゴと共に添えられているのですが、このプレートの裏には笑顔と泣き顔の仮面が描かれています。これは欧米では、古代ギリシャ演劇に端を発する劇場を表すシンボルで、広く使われています。
ということは、この2人はこれから劇場に向かうのでおしゃれをしているのですね。
さて、問題は何を観にいくのかということ。そのヒントは簡単に見つかりました。女性の足元に「AIDA(アイーダ)」のパンフレット(?)が。アイーダは日本で舞台にもなっていますが、そもそもはオペラ作品です。
調べてみると、ヨーロッパでは9月にオペラシーズンが始まり、6月に終わるのだとか。ということは、このシーズンの始まりとは、オペラシーズンのスタートを表していたのですね。
最後は12月のプレート「Mirakel(奇跡)」です。
このプレートは、3月の結婚式を描いたものと人気を分かつ月で、出産のお祝いに選ばれる方もいらっしゃいます。
タイトルの「奇跡」の意味ですが、もちろん無事赤ちゃんが生まれるだけでも、それは一つの奇跡であるという解釈も正解だと思います。
ただ、もう一つ深読みすると、このプレートが12月ということに意味がありそうな気がします。
12月と言えば、言わずと知れたクリスマス。つまりイエス・キリストの誕生した日がありますね。
つまり、女性はキリストの母、聖母マリアで、生まれた子どもは幼子イエスの象徴。空に輝く満天の星(そもそも室内に星があるのが不思議ではないですか?)の中、ひときわ大きく輝くのはイエスの元に東方の三博士を導いた星。子どもに捧げるようにプレゼントを差し出す男性は、その三博士の象徴。そして、タイトルの「奇跡」とはキリストの奇跡を表している・・・と解釈するのは考えすぎでしょうか。
プレートの絵を見て、そのものの可愛らしさを味わうのも楽しみ方の一つですが、こうやって別の国の文化や習慣に思いをはせるのも私にとっては一つの楽しみなのです。
ミタ
「仮面舞踏会」といえば少年隊、「謝肉祭」といえば山口百恵が検索に出てきました。うーん、どちらの歌も知りません。