流れる青い火

おはようございます。
本当に久しぶりにRorstrandのBlå Eldシリーズを買い付けました。Blå Eldとはスウェーデン語で「青い火」と言う意味ですが、そもそもはBlåeld、英語でバイパースビューグロスという小さな青い色の花から取られた名前のようです。
以前、カップ、プレート、シュガーボウル、クリーマーが入荷したのですが、ピッチャーは初めてです。大きめで存在感があり、深い藍色は花瓶として花を生けても最高に映えるでしょう。このシリーズはその繊細さがあだとなり、きれいな状態のものが見つかりにくいのですが、今回入荷は大変状態のいいものです。
Blå Eldは1949年にHertha Bengtsson(ヘルサ・ベングトソン 1917年-1993年)がデザイン。製造は1951年から1971年まででした。デザインから製造までに時間がかかったのは、この美しい青い色の釉薬が焼成時にどうしても気泡が生じ、それを解決するために様々な配合で試作が行われたからです。
このシリーズはアメリカで特に大変な人気を博し、最初の青と白に加えて、後にアメリカへの輸出用として赤と、僅かな製造数でグレーと緑が製造されます。
バックスタンプに「Rörstrand Inc. Sweden」と英語で表記されているものは輸出用。いまでもアメリカでは熱心なコレクターがいるそうです。
このフォルムが世に出されたときに、世間は衝撃を受けました。その優雅なフォルムは、単に形に収まらず、表面に施されたヘリンボーン模様がフォルムにしたがって変形しています。

こちらの写真で分かるでしょうか?ロープのような柄が持ち手に終結し、まるで中に何か重みのある物を入れた袋をつまんで持ち上げたようです。
この効果で、硬いストーンウェアの製品が、柔らかく流動的な印象を与えています。

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ヘルサ・ベングトソンはこの作品でロールストランドにおける彼女の名を不屈のものとしました。そもそも彼女の作品は売れ行きが良く、一種のスターデザイナーとして、1959年にはイギリスのテレビ番組にロールストランドを代表して出演したほど。
その彼女がロールストランドを離れたのは1964年。きっかけはロールストランドがUpsala-Ekebyグループに吸収されたことでした。
そのとき、一つのいい時代が終わった、と感じたそうです。
翌年、たった25名の従業員しかいなかったAndersson & Johansson(現:ホガナス ケラミック)に入社。1955年にスウェーデンのヘルシンボリで行われたH55展以来売り上げを伸ばし、新しいデザイナーを欲していたホガナスと、機械生産が席巻しつつある中で、クラフト的な製造を欲していたベングトソンはお互いの利益が一致した形となりました。
ホガナスに入るなり、すぐに多くのヒット作を生んだベングトソンですが、1969年には解雇になってしまいます。理由は分かりませんが、ロールストランド流の完璧さを求めるベングトソンにホガナスが堪えられなかったとか、金銭的な問題とかの憶測があります。
ベングトソンはショックを受けたようですが、名の知れた彼女のこと、すぐにドイツのローゼンタールから、フリーデザイナーとして起用され、ここでも多くのヒット作を産みます。これが50代初めのことです。
1980年代初めの60代まで、10年以上仕事をしたローゼンタールでは、ガラスデザインも手がけ、このことが彼女に新たな道を示すことになりました。デザインするだけでなく、夏の間アメリカのガラス学校に入り、吹きガラスについて学びました。
1990年、73歳の彼女はガラス作家として新しい時を迎えます。数多くのユニークで美しいガラス作品を生み出し、1993年に亡くなる年までガラス制作に打ち込んだのだとか。
機械的な生産を嫌い、亡くなるまでクラフトマンであったベングトソン。彼女の人生は、まるでBlå Eldのように、一見流動的でありながら、実は硬い芯を持っていたのかもしれませんね。
..
いくつになっても新しいことを始められるのですよね。

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流れる青い火」への4件のフィードバック

  1. 転んでもただでは起きないって私の理想です。必ず何かを掴んで起き上がるヘルサ・ベングトソンさん。人を惹きつけずにおかない繊細で美しく力強い作品同様生き方が天晴れです。全部の作品を見たくなりました。それにしても北欧には魅力的な女性作家があふれていますね。

  2. >>もももままさま
    北欧は女性が活躍していますよねー!女性作家の人生には、同じ女性としてとても興味があるのです。もっと沢山知りたい人がいるのですが、いかんせん、資料が北欧語で読めない・・・。一旦英語に訳すのですが、英語もスラスラ読めるほうではないので、時間がかかっちゃって・・・。しくしく。

  3. しくしく姫!私はあなたの情報だけが頼りです。ボチボチで結構、楽しみにしてますよ♪

  4. >>もももままさま
    そうですか♪それでは、以前からやりたかったノルウェーのInger Waageさんに取り掛かろうかなあ?これがまた、結構な長さのノルウェー語なんですけれど、ボチボチやってみます・・・。

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