前回書いた通り、ルーネベリタルトのマグを受け取りにヘルシンキ近くまで行きました。せっかくここまで来たのだからと、美術館へ足を延ばすことに。時間的に一つしか行くことが出来ないので、HAM(ヘルシンキ市立美術館)でフィンランドのミッドセンチュリーデザインをテーマにした「Modern Life!」にするか、Ateneum(アテネウム美術館)の「Tuulikki Pietilä(トゥーリッキ・ピエティラ)生誕100年」に行くか迷って、HAMの方に行くことにしました。
HAMは一見美術館とは思えない外観で戸惑いました。それもそのはず、1階は映画館「Finnkino」。中に入ると沢山の親子連れや若者たちでとても賑やか。
エレベーターで登った2階から美術館でした。入口は小さかったのですが、中は意外と広く、天井の高い内部にはミッドセンチュリーの象徴的なマリメッコの服の展示が目を引きます。
アルヴァ・アアルトの曲木の椅子など。
椅子の展示の向こうの壁では当時の様々なビジュアルのスライド上映。この時に映っている写真はフィンランドの有名な中長距離ランナー、パーヴォ・ヌルミのブロンズ像です。
1920年代にアントワープ、パリ、アムステルダムのオリンピックでメダルを取ったヌルミは「フィンランドの走る奇跡」「空飛ぶフィンランド人」と呼ばれたとか。彼をモデルに1940年のヘルシンキオリンピックポスターが作られましたが、そのオリンピックは1939年ソ連がフィンランドに侵入した、いわゆる冬戦争勃発で中止。戦後の1952年に開催となったヘルシンキオリンピックのポスターは使われるはずだった1940年のビジュアルをそのまま使用したそうです(左の赤ラインが1952年、右のオレンジラインが1940年)。この話は胸を打ちました。
戦中戦後のフィンランドは敗戦国として実に大変な時代を過ごします。40年に戦争によって実現されなかったオリンピックポスターをそのまま持って来ることに、当時のフィンランドの強い復興への思いが感じられたからです。ヘルシンキオリンピックの背景については、以前にもう少し詳しく書いていますので、合わせて読んで頂ければよりわかると思います。
→悲願のヘルシンキオリンピック
ヘルシンキオリンピックの話は、戦後日本と東京オリンピックの心情に重なります。
展覧会では他にも食器など生活用品や、住宅モデルなど暮らしが分かる展示もありましたが、長くなるので割愛します。
ところで、同時にムーミンの作者トーベ・ヤンソン展も開催していました。小規模ですが、良い展示内容。またなぜか日本語のしっかりとした作品解説も用意されていて、以前にアテニウム美術館で大規模なトーベ・ヤンソン展を観ましたが、同じ作品でも内容を深く理解することが出来ました。この展示についてって日本で紹介されていましたっけ?
トーベ・ヤンソンといえば、どちらにするか迷ったアテニウム美術館の「トゥーリッキ・ピエティラ 生誕100年」展のトゥーリッキ・ピエティラはトーベの生涯にわたる恋人でした。グラフィックデザイナーでアーティストの彼女はムーミンのキャラクター、トゥーティッキのモデルです。
HAMの「Modern Life!」展は自分の興味のある時代とテーマだったので、こちらを選び、確かに面白かったのですが、内容としてはデザインミュージアムなどの他のフィンランドの美術館、日本のフィンランド展やマリメッコ展でも見た事があると言ってしまえば、そんな感じ。一方トゥーリッキ・ピエティラの作品はきっと来日しないだろうし、そっちにすれば良かったかなあ、と今になると思ったりもするのですが、まあ、良い気分転換で楽しかったので良しとしましょう。
オシャレなカフェでオシャレなランチを食べた話も書こうと思ったのですが、長くなったので、これも割愛。
ご興味のある方に、カフェの名前とサイトのリンクを貼っておきますね。
SIS. Deli+Café
Kalevankatu 4, Helsinki
ミタ
余談ですがHAMの職員さんはユニフォームとしてマリメッコのヨカポイカシャツを着ていました。トーベ・ヤンソン展の入り口に座っている人も、この写真の右端の人も。問題点としては、たまに観客と服が被ってしまうことでしょうか。