フィンランドのアラビアで数多くの装飾デザインを担当したエステリ・トムラは特に植物の絵を得意としていました。
晩年はボタニカルアートのような精密な植物画を描いていた彼女ですが、60年代、70年代は当時の流行を受けた抽象的なパターンの作品が主流です。とはいえ装飾的な形に変えられた花は、細かな観察の上で成り立っているのが分かります。
こちらは1970年代にデザインされたGardenia(ガルデニア)のプレート。ガルデニアとはイタリア語でクチナシのことです。プレートの中心にはクチナシの花が大胆に描かれ、背景の紺と白の花のコントラストが大変美しいデザインです。
この写真では中央の装飾が分かりにくいので、全体は下記リンク先からご覧下さい。
→Arabia Gardenia
真上から見た大きなクチナシの花3つが、それぞれ異なるフォルムで描かれ、周囲を埋めるように横向きの花が取り囲んでいます。3つの花は三角形という安定した配置ながら、位置を不均等にしているので僅かな違和感が動きの面白さを出しています。
クチナシは歌手のビリー・ホリデイが好んで髪に飾った花としても知られています。
昭和歌謡曲では、やせてやつれた寂しい笑顔の女性に例えられていますが、実は主に暖帯や亜熱帯地域の暖かい気候の地に咲く花。
フィンランド人のトムラにとっては寂しいというよりむしろ、エキゾチックで力強いイメージがあったのでしょう。
ミタ
ブルーの他にブラウンもあります。