
フィンランド2日目の朝は、ヘルシンキでいちばん有名な蚤の市「ヒエタラハティ(Hietalahden kirpputori)」へ。この日は朝から快晴。日本人の間でも一番知られているフィンランドの蚤の市かもしれませんが、実は私は初めて行った…と思います(言い切る自信はありませんが)。この20年弱でフィンランドには30〜40回ほど訪れていると思いますが、仕事だと案外こういう場所に立ち寄る時間がないものです。

まずはテント屋台でカルヤランピーラッカ(カレリアパイ)と温かいコーヒーで腹ごしらえ。少し冷たい朝の空気の中、フィンランド旅のはじまりにぴったりの朝ごはんです。

コーヒーが入った紙コップには「Juhla」の文字。ユフラはフィンランドで最も親しまれている、いわば庶民的なブランドです。

ここは一昨年、しずく堂さんと訪れたのに、なぜか開催していなかった場所。しずく堂さんが張り切って「インスタライブをしよう」と言っていたので、開催していなくてがっかりしていたのを覚えています。だから今年こそは「行こうね」とヘルシンキ滞在が週末になるようにスケジュールして「インスタライブもしたいね」と、彼女が希望していた訪問地でした。

私は彼女のようにSNSを上手に使うタイプではなく、ましてやインスタライブなんてとても無理…と思っていたのですが、入院中のしずく堂さんに少しでも見てもらいたくて、思い切ってライブ配信をしました。二人でお喋りしながらならともかく、独り言を言いながらスマホを構えて歩くのは、なかなか気恥ずかしいものです。
あとで見直してみると、なんとArabiaの100周年記念カップの値段を、同じお店で2回も聞いていました。そのときはまったく気づかず…。ライブ中の緊張もありますが、自分の記憶力のほうが心配になりました。しかも「結構リーズナブルだな」と思いながら、結局買っていないという……。
動画を見ていただくと分かる通り、ヒエタラハティ蚤の市には、アラビアのヴィンテージ食器やマリメッコの古着など、日本人にも人気のアイテムだけでなく、本やピンバッジ、ちょっとしたおもちゃやガラクタのようなものまで並んでいます。フィンランドの人たちの日常が垣間見えるのも、このマーケットの魅力のひとつ。観光客だけでなく、地元の人々も日用品を探しに訪れています。
もちろん、思わず「これは!」と目を引く貴重なヴィンテージアイテムも多く、まさにお宝探し気分が味わえます。ただ、ほとんどのお店が現金のみなので、訪れる際は少し多めにユーロを用意しておくと安心です。

仕事柄どうしてもアラビアなどのヴィンテージに目を奪われてしまうのですが、今回の目的は買い付けではなく、家人へのお土産。

彼は10年ほど前に買ったマリメッコのヨカポイカシャツを今でも繰り返し着ているので、「ヨカポイカをもう1枚プレゼントしよう」と決めていました。ところがサイズが分からない。家人にLINE電話しても出ない(スマホをどこかに置きっぱなしにしているのはいつものこと)。

困っていると、日本人の女性と、流暢な日本語を話すフィンランド人男性のカップルが買い物をしていました。思い切って話しかけてみると、とても親切にアドバイスをくださって、おかげでぴったりサイズで状態の良いシャツを2枚も見つけることが出来ました!1枚のつもりが2枚!
ところが今度は、手持ちの現金が5ユーロ足りないという事態に。思い切ってお店のおばさんに伝えると、さっきまで「まけない」と言っていたのに、さすがに財布から全部出したのを見て「いいよ、5ユーロ引くね」と言ってくれました。
そのとき、一緒に選んでくれたそのフィンランド人の彼が「自分が5ユーロ出そうかと思ってました!」と日本語で言ってくれて、なんだか嬉しくなる出来事でした。お礼に、二人にビールを一杯ごちそうして、しばしフィンランドの話など聞きながら楽しい時間を過ごし、お互いに名前も告げずにお別れしました。

こんな時、しずく堂さんならすかさずインスタのアカウントや連絡先を交換したんだろうなあ。
彼女の闘病を告白したインスタには、何年も前にフィンランドの旅先で知り合った方から「その時に話した夢を実現しています」というコメントが寄せられていました。私は彼女のそういうところが好きだったのですが、なかなか真似できません。次にそんな出会いがあれば、勇気を出してみようかな。
しずく堂さんは、このインスタライブを見てくれていたのでしょうか。もう本人に確かめることはできませんが、今になって後悔しているのは、負担になってはいけないと思って、インスタライブをしたとか、何があったとか、現地から何も連絡しなかったこと。帰国してももう会えないと分かっていたなら、そんな遠慮なんてしなければよかった。
さて、次回は、このあと訪れたアアルトのスタジオや街の風景へと続きます。