2004年にデンマークの食のプロデューサー、クラウス・メイヤー氏は10カ条におよぶ「ニューノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)のマニフェスト」を発表しました。その10か条を簡単にまとめると、北欧の伝統的な食材や調理法に外国の影響を融合し刺激を与えることで、新しい利用価値を高め、北欧諸国全体に利益をもたらそう、というものです。
気候が厳しいため食材が限られ、20世紀初頭まで多くの移民を生むほど貧しく、美食とは無縁だった北欧。料理と言えば伝統的な素材を伝統的に調理したシンプルで地味なものばかりというイメージがあったのですが、この活動を通して飛躍的に発展し、今や北欧は美食の地として世界に名を知られるようになりました。
現在では北欧5か国に広がりを見せている新北欧料理。中でもその動きを牽引しているデンマークのNoma(ノーマ)が2015年1月に期間限定で東京に進出、もうすでに満席になった、なんていうセンセーショナルなニュースも耳に入ります。
前置きが長くなりましたが、そんな折り東京の北欧レストランの一つ「アクアヴット」が、ニューノルディックキュイジーヌにメニューを一新したと聞いたので興味津々で行って来ました。
ちなみに、以前アクアヴィットで食べたときは、ニシンの酢漬けやサーモン、ヤンソンの誘惑と、いわゆる北欧の定番メニューのおしゃれバージョンでした(下にリンクを張りました)。
→外苑前アクアビットで北欧料理
今回は新北欧料理(ニューノルディック・キュイジーヌ)に共鳴して作られたコースを選んだので、とにかくどれも斬新、そして美味しかったです。それぞれの料理の感想を書こうかと思ったのですが、私にはとてもうまく表現できないので、写真をお楽しみください。
「鱈子のスモークとシリアルブレッド」
手前の白いものはチーズのムースだったかな?
「白トリュフの香る卵のムース ノルウェーサーモンのタルタル 竹炭のブッセ 青さ海苔のブリオッシュ添え ウィートグラスとエルダーフラワージュース」
「殻付帆立貝とパドルフィッシュキャビアのミルフィーユ あみがさ茸と杏仁の泡と供に」
「フォアグラテリーヌと白人参のロールケーキ 黒胡椒のアングレーズソース」
「天然真鯛とオマール海老のスフレ 甲殻類のエキスと黒トリュフのソース」
「カカオのムースと牛蒡のグラニテ」
「キャベツと蚕豆のロール仕立て ポルチーニ茸のムースリーヌソース」
「シャラン産窒息鴨と胡桃の天然岩塩焼き チェリーマニエの香る赤ワインソース」
「林檎の木のアヴァンデセール」
はい、前回アクアビットに訪れたのと同様、私の誕生日のディナーでした。
お店の人が写真を撮ってくださいました(向かいに夫がいます)。
コーヒーと最後の小さなデザートはデンマークのお菓子、エーブルスキーヴァで終了。
思いがけない食材の組み合わせや調理法、演出が面白く、一皿ごとにワクワクとする気持ちを味わえ、感想を言い合ったりと(倦怠期の我々でも)会話が弾みました。
これらが北欧料理か、と問われれば、違うかも、と答えてしまうのですが、新北欧料理のマニフェストの一つが地元の伝統食材の新しい利用価値にあるのですがから、日本のアクアヴィットがゴボウや竹炭、蚕豆(ソラマメ)、青海苔といった日本の食材をふんだんに使っているのも納得です。
他にも日本に新北欧料理を出すレストランがあるのかどうか、私は知らないのですが、北欧に行かずとも話題のニューノルディックキュイジーヌを味わうにはお勧めです(先に書いた通り東京のノーマは満席ですし)。もちろんアクアヴィットには伝統的な北欧料理をベースにしたメニューも健在ですので、そちらもお楽しみいただけますよ。
最後にご参考のため、ニューノルディックキュイジーヌのマニフェスト10か条を記載します。
新北欧料理のマニフェスト
「われわれ北欧の料理人たちは、今こそ美味しさと北欧ならではの個性を持った『新北欧料理』を生み出し、世界の偉大な料理と肩を並べる時であることを確信する」
新しい北欧料理の目的とは
1、北欧という地域を思い起こさせる、純粋さ、新鮮さ、シンプルさ、倫理観を表現する
2、食に、季節の移り変わりを反映させる
3、北欧の素晴らしい気候、地形、水が生み出した個性ある食材をベースにする
4、美味しさと、健康で幸せに生きるための現代の知識とを結びつける
5、北欧の食材と多様な生産者に光を当て、その背景にある文化的知識を広める
6、動物を無用に苦しめず、海、農地、大地における健全な生産を推進する
7、伝統的な北欧食材の新しい利用価値を発展させる
8、外国の影響をよい形で取り入れ、北欧の料理法と食文化に刺激を与える
9、自給自足されてきたローカル食材を、高品質な地方産品に結び付ける
10、消費者の代表、料理人、農業、漁業、食品工業、小売り、卸売り、研究者、教師、政治家、このプロジェクトの専門家が力を合わせ、北欧諸国全体に利益とメリットを生み出す
ミタ
店内が暗いので写真が難しく、あまり美味しそうに写っていませんが、美味しかったですよ。竹炭のブッセなんてどこに何があるのかも良く分かりませんね!