北欧の人が心待ちしている年中行事が三つあります。私は個人的にそれを”北欧三大祭”と呼んでいます。
まず、一番大きなものが冬のクリスマス、そして次が初夏の夏至祭、最後が春のイースター(復活祭)です。
もちろん三つとも北欧だけでなく、どの国でも季節ともに訪れるもので、クリスマスはキリスト教の国ではどこでも重要な日です。けれども夏至祭とイースターについては北欧ほどの盛り上がりは他の国では無いような気がします(むしろイースター前の謝肉祭/カーニバルが大きなお祭だったりしますね)。
イースターは今ではキリスト信仰と結び付けられています(復活祭=キリスト復活のお祝い)が、そもそもは春の到来を祝う古いお祭りでした。イースターの卵は春になって芽吹く生命を現わし、イースターのウサギはその跳ねる楽しそうな姿から新しい命を連想したものです。
思うに北欧は冬が長くて厳しい環境なので、寒さの終わりを告げる節目、節目がとても楽しみで大切なのでしょう。
トップの写真でケーキの横に置いているのは、スウェーデンのイースターカードです。アンティークショップで古いカードが無造作に山積みになっているところから見つけました。
使用済みで、裏には宛名とメッセージ、それに切手が残っています。
同時に買い求めた他のカードの消印から推測するに、1940年代初めものと思われます。
「Glad Påsk(イースターおめでとう)」の文字の下にはバスケットいっぱいの卵とイースターを象徴する黄色い水仙を初めとした花が描かれて、いかにも春の喜びを感じるイラストです。
右端のサインを見て、へーと驚いたのは、イラストを手がけているのがグスタフスベリを代表するデザイナーの一人、スティグ・リンドベリだったことです。リンドベリは1916年生まれ、このイラストを描いたと思われる頃はまだ20代です。
リンドベリは若いころから大変な才能を発揮し、1940年代初めには既に知られた存在になっていました。グラフィックの才能もあり、グスタフスベリ製陶所に所属しながら、1940年代後半からテキスタイルや絵本の挿絵を手がけていました。ですから、当時こういった小さな(?)仕事もやっていたのは、とても意外に感じたのです。
また、もう一つの驚きは、このカードが作られたのが戦火の最中だったことです。1940年代、リンドベリはグスタフスベリで18世紀から途絶えていたファイアンスという技術の開発に没頭し、このイラストのように美しくロマンチックな作品を数多く作っていました。
外では周辺の国々が瓦礫と化している不穏なニュースが耳に入り、そして家庭では新婚の妻が病気が原因で生涯車椅子となり、楽しいばかりではないどころか、むしろ厳しい中、リンドベリが絶えず夢のような作品を描いていたことには感動すら覚えます。
さて、このイースターカードは私物ですが、その下の花柄のプレートは近々サイトにアップする予定のHaga(ハーガ)です。以前ディーププレートが入荷しましたが、今回はデザートプレートです。デコレートはカードと同じリンドベリ。製造は1950年代ですが、作風はあまり変化していません。
ただ、このシリーズ、一枚一枚周囲の花の位置が少しずつ違うのです。当時も現在と変わらず、イラストをプリントしたシートを貼り付け、焼き付ける方法で作られているのですが、大雑把というか、メーカーもあまりこだわりが無かったのか、イラストは同じなのにシールの位置がそれぞれ違う。
今回入荷の6枚のうち1枚は花だけでなく、蝶々の向きも違うし、なんともネットショップ泣かせ。アップの時はお選びできるようにするか、6枚別々にするか、ただいま考え中です。
ミタ
毎年日にちが変わるイースターですが、今年は3月31日です。2枚目の写真のカードの下に描かれているのはヤカンを持った魔女です。スウェーデンではイースターの前日に魔女の扮装をしてヤカンや鍋を持って家々を周り、お菓子をもらう習慣があります。