第2回「北欧を知ろう」講座

おはようございます。
先週末の1月30日、目黒区による「北欧を知ろう」講座第2回が無事終了しました。講師は前回と同じく、東海大学北欧学科 准教授 池上佳助氏です。
今回は、北欧が何故「福祉国家」への道を歩んだのか、女性の立場を主体にお話をしてくださいました。
まず、冒頭に「北欧の社会とは個の自律を求める国である」と始まりました。「個の自律」とは、辞書によると「他からの支配・制約を受けず、自分自身で立てた規範に従って行動する」ことなのだそう。
ところが、自律するには環境整備が必要である。
つまり、自分がこうありたい、と思っても、そこに自ら選ぶ選択肢が無いなら、それは自律への道を阻んでいる、と。
例えば、女性が結婚・出産・子育て・介護のときに、キャリアを諦めなけばいけない。あるいは、一見選択肢が複数あるように見えても、その間に不合理な格差(待遇など)があれば、それは一つしかないということである。
それを認めないのが北欧社会なのだそうです。
先ほどの例ならば、保育・介護施設の充実を図ることで、家庭と仕事との両立を支援しています。
更に、もし自分の手で子育てに関わりたければ、同じ会社に勤めながら、パートタイムにシフトでき、その期間が終われば前回と同じ職にフルタイムで戻れる保障があるのだそうです(男性も同じ)。
しかも、パートタイムとフルタイムは全く同じ時給・社会保障を受けられるのだそう(労働時間が短いので、給与は減る)。つまり、二つの選択肢の間に不当な格差が無いのです。
これは、女性に主眼を置いたお話ですが、それをそのまま障害者・高齢者に置き換えても同じとお話してくださいました。
面白かったのは、そもそも「福祉国家を目指した」訳ではなく、のっぴきならない理由で「福祉国家になった」という点でした。
戦後、中立国だったスウェーデンは、ヨーロッパ内でも数少ない戦争被害が少ない国でした。また、戦争で人が亡くなっていない(義勇軍に参加した人もいましたが)ため、急速に復興し、経済がたちまち発展。1960年代には黄金と繁栄の時代を迎えます。
こうなると、問題になってくるのが、「人手不足」。
そもそも、当時は人口800万人程度(現在約900万)の小国です。働き手がいない。
解決策として生まれたのが、移民の受け入れ、そして、主婦を労働力として家庭から引き出すことでした。
1960年代以前は北欧でも、家事、子育て、介護は女性の仕事。特に先ほど書いたように戦争で人が亡くならなかったので、急速な高齢社会に入っていきました。当時、全人口で14%が高齢者。
それが足かせなら、社会全体がそれらの面倒を見ようではないか、「仕事か家庭か」ではなく「仕事も家庭も」にしようではないか、という理念が生まれ、福祉サービスが拡大したのだそうです。
もちろん、それを実現するにはお金がかかります。そして、そのお金は当然税金から支払われることになります。
現在、ざっくり乱暴に言うと、消費税25%、所得税30%から60%。
それでも、教育・医療は全て無料。老後の心配もありません。ですので、北欧の人は貯金をせずに収入のほとんどを使ってしまうと聞きました。
この高い税率については、何度か北欧でも議論されたそうですが、結局国民の意見を問うと、「税金は高いのはつらいけど、やっぱり公共サービスが無料の方がいいやね」といった結論に落ち着くのだとか。
高い税金を払うためには、共働きでないとやっていけなくなり、今や16歳から65歳(学生は除く)の女性就労率はほぼ100%。なんと、「専業主婦」という言葉が死語になっているとか。
そういえば、大きな会社の経営者の方にお会いしたこともあるのですが、その奥様も別に職業を持っていらっしゃることに意外な気がしました
労働力不足→女性を労働者に→福祉の充実→多くの税金→収入が減る→共働きでないとやっていけない→女性が働きやすい環境を作る→福祉の充実・・・(以下繰り返し)
と、循環して、男女平等、福祉国家を歩んだのですねー。
もちろん、「女性を社会に」だけでは、片車輪で走っているようなもの。その反面としての「男性を家庭に」施策も当然あります。男性の育児休暇の取得率は80%。北欧には男性トイレにも「オムツ換え台」が設置されていますよ。
*スウェーデンの育児休暇は夫婦合わせて480日。どちらが何日休んでもいいが、内60日は男性が取らないと、その60日の権利が消滅。
さて、北欧講座はいよいよ来週から、テーマごとに分かれた講義に移っていきます。
ところで、この講座は無料で、抽選で選ばれた方のみの参加可能なのですが、毎回5名程度の欠席者がいらっしゃいます。季節的に体調を崩される方もいるのでしょう。
担当の方に伺うと、欠席が多い場合は当日飛び入り参加を認めても、いいかな~~??と思っているそうです。
担当者レベルの話ですし、お役所なのでどこまで柔軟か分からず、はっきりとしたことは言えませんが、2、3名ならば可能かもしれません。ちょっと不便な場所ですが、目黒通りに近いので、インテリアストリート散歩ついでに寄る、くらいの、ダメもと程度の気持ちで覗いていただいてもいいかもしれません。
ミタ
..
えー、先週の「テパメ」ですが、楽器演奏同好会だそうで、名前の由来は不明だそうです。

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第2回「北欧を知ろう」講座」への5件のフィードバック

  1. わかりよい講座レポートありがとうございます。日本も、もうのっぴきならないところに来ていると思うけど・・・。夕べもTV見ていて持ちつ持たれつの社会が崩壊してる現実に愕然としました。次週レポートも期待。
    ついでにテパメの人にカンテレの演奏も勧めといてね♪
    さりげなく掲載の写真の2人めっちゃめちゃええね!!

  2. >>k7さま
    日本ものっぴきならないですね・・・。
    北欧の投票率は80%を超えているらしいです。国民も住みよい社会にするために協力しているんですよね。そして政党もそれに応えようとしている。
    写真の二人は週末にハンガリーから来ました~♪今月か来月にはアップしますねー。

  3. とても興味深い講座内容だったので、ミタさんのレポを読んで、行った気分がよく味わえました。とても分かりやすく、もっともっと北欧のことが知りたくなりました。

  4. とても分かりやすいご説明に、うん、うん!と納得致しました。北欧雑貨ブームは昔から続いているけれど、こんなふうに北欧社会をもっともっと知ってもらいたいと私も願っていたので、ミタさんの講座、日記に拍手です。私はデンマークに住んでおりますが、スウェーデンと同じように、医療費・教育費が無料、世界でいちばん幸せな国民と毎年、国連やいろいろな研究団体によって認定されています。(幸せかどうかはもちろん個人の問題でもあるけれど、これはどれだけ個人が幸せに安心して暮らしていけるための社会保障がなされているかということです)税率はスウェーデンと同じようにすごく高いけれど、この税率を下げようと政府が提案したら国民が反対したほどで、国民が税金の使われ方に満足していることが分かります。政治家たちの税金の使い方が公正で、毎年政府予算は黒字・・・多額を貯金してすらいるそうです。不況の際には、国民にその貯蓄がかえってきて経済を活性化させたりと、柔軟な政策がなされています。日本と北欧社会は違うけれど、でもいいところが取り入れられれば・・と願ってしまいます。私ももっと研究していきたいと思っております。これからも、Fukuyaさんでどんどん素敵な北欧雑貨のみならず北欧社会を紹介なさっていてください!陰ながら応援しております・・

  5. >>kazさま
    こんにちは。ありがとうございます。
    池上先生のお話がすごく分かり易かったのですよ。本当はもっと長かったのですが、とてもまとめきれませんでした・・・。担当の方に「ビデオを撮って販売しましょう!」と言ったら「役所なので、それは出来ません」。そりゃそうですが、儲けは出さないで、CD代だけでもいいのになあ。
    >>ピーダーセン恵さま
    こんにちは!コメントありがとうございます♪池上先生の講義が良かったのですよー。
    池上先生は、もちろん、決して完璧に上手くいってはいないこと、社会ではどこか女性に子育て・家事を期待されていること、公共企業以外では男性主導の部分もあること、などもお話してくださいました。
    また、そのシステムをそのまま日本に取り入れることの難しさも。けれども、やっぱり国民の意識が違いますよねー。
    ノルウェーも有り余る原油輸出の利益を貯蓄して将来に回すのだそうです。だから、国は儲かっているけれど、税金は相変わらず高い。けれども国民はその施策に納得しているらしいです。

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