第3回「北欧を知ろう」講座

100208.jpg

おはようございます。
2月6日、「ノルウェー夢ネット」代表の青木順子氏を講師に迎えた、第3回目の「北欧を知ろう」講座を聴講してきました。
青木さんは、ノルウェーの大学に留学された経験を元に、教育事情についてお話してくださいました。お話は教育にまつわる様々なシステムについてだったのですが、私が印象に残ったのは、システムそのものでなく、ノルウェー人の教育に対する考え方でした。
ノルウェー人に「子どもに期待する気質は」とアンケートを取ると
1位 責任感
2位 独立心
3位 寛大であること
という結果だったのだそうです。
欧米の多くの国では、18歳になると親元を離れ、独立します。ノルウェーも例外ではなく、そのため、高校の社会科教科書では、いかに自立するのか、がテーマの一つだそう。
また、教科書では学生を「子ども」ではなく「若い大人」として扱っているのが特徴だそうです。
そのとき思い出したのは「未完成の大人」という言葉。
以前、ブリューゲルの「子供の遊戯」という絵についての解説で、中世・近代のヨーロッパでは、子どもは「未完成の大人」である、という思想があり、このように子供を子供として描いているのは珍しいと読んだ気がします(うろ覚えなので、間違っているかも?ですが)。
スウェーデンの取引先でお茶をご馳走になり、オーナーの娘さんとお孫さんが同席したときのことです。お茶が始まる前にお孫さんが、お菓子を欲しがってむずかったときに、娘さんが「ごめんなさい。この子はまだ1歳半で、いまお菓子を食べていい時かどうかの判断がまだ出来ないの」と謝られたときも、この「未完成の大人」という言葉が頭に浮かびました。
旅先でも、ヨーロッパ人の子供が何か人に迷惑を掛けるような事をしたとき、親が遠くから怒鳴りつけるのではなく、近くに呼び寄せて、小声で諄々と言い聞かせている光景に出会います。母が言うには、イギリス人の義兄が甥を叱るときも、矢張り同じように近くに呼び、何故いけないのか時間をかけて説明するそう。
そういった場面に出会うたびに、ヨーロッパでは子供を「小さな大人」として扱う文化が、いまだ残っているのではないか、という思いがよぎります。そして、その未完成の大人を完成させるのが、社会の役割と考えているのではないでしょうか。
(イタリア、ナポリの下町で大声で子供を叱っているのを見ましたが、それはそれで、南欧らしくて面白かったです)

さて、話は戻ってノルウェーの高校教育ですが、教科書では最終的に子供たち(といっていいのかな?)がいかにして自分で考え、社会で独立していくべきかを指導する内容になっているのだそう。
それは、金銭管理の方法、自分の意見を社会に発する方法、更には職業の選び方、その職業への就き方など、実践に伴った現実的な方法を指導しています。
そのためか、ノルウェーでは将来なりたい職業に直結した大学の学部、あるいは専門学校に行くのが当たり前。日本のように、例えば、将来法律の仕事に就くつもりも無いのに、法学部に行くなんてことは無いのだそう。
その選択は更に遡り、まずは15歳で、高校の普通科に行くか、職業科に行くのかといった判断をしなければなりません。約半数の生徒が職業科に進むそうですが、基本的に大学進学資格が得られるのは、普通科の生徒のみ。
職業科は電気、大工、看護、演劇、理髪など、かなり職業に直結した事を学ぶので、普通科の勉強とは異なります。ですので、もし途中で進路を変更して大学に行きたいと思えば、3年間のところを進学に必要な科目をプラス1年間、つまり4年間学ばなければならなくなりますから、軽い気持ちで選ぶわけにはいきません。
(大学に入学試験は無く、高校の最終試験の成績で決まるので、受験で入学することが出来ません)
つまり、その前の中学生(7年生から9年生)の間に既に、社会に出たら何になりたいか、という判断をしなければならないのですね。
デンマークも同じような教育システムのようで、以前デンマーク人に「15歳で自分が、エンジニアになりたいのか、大工になりたいかなんて分からないじゃない?」と尋ねると「そうだよね。15歳がなりたい職業なんて、みんなロックスターだもんね!」と笑って答えてくれました。
ヨーロッパの人がきちんと自分の意見を発することが出来る、自立している、というのは、こんな早くからの教育にあり、そして、親もそこを子供に期待しているバックグランドから来ているのですね。
というと、まるで冷たい家族関係のようですが、週末に親を訪ねたり、電話をしたり、いくつになっても誕生日ごとに集まってお祝いをする、何て話は日本よりも頻繁に耳にします。
あるいは、個が個として自立しているから、大人同士の関係をきちんと親子でも持てるのかもしれません。
ミタ
..
甥が6歳くらいのときでしょうか「僕がニャーって行ったら猫がニャーって言ってconversation(会話)したの」と言うので「お互いに何を言っているか分からないならconversationではないでしょう?」と答えると「conversationだよ!だって、僕はパパが何を言っているのか分からないけど、それはconversationだもん!」と返されました。
やっぱり、何を説得されているのか、理解はしていなかったようですね。

【この記事をシェア】

第3回「北欧を知ろう」講座」への4件のフィードバック

  1. ミタ先生は本当に毎回わかりやすい講座レポートを書いてくれますねえ。拍手。Exellent!
    ところで、毎日わが家で交わされる夫との会話はconversationか否か6歳時の甥っ子君に判定してもらいたい。え?鼻から何を説得されているのかわかっとらんって?・・・ン。

  2. >>k7さま
    いやいや、先生の講義が分かりやすいのですよ。この全講座パッケージにして高く売れないでしょうか(渦巻く黒い心)。
    我が家の両親の場合は、二人が全く違う事を話しているので、conversationどころかcommunicationになっているかも怪しいものです・・・。

  3. ご無沙汰しております。先日は講演でお世話になりました。相当時間が経ってから、ミタさんがご丁寧な講座レポートをUPして下さったことに気づき、本当に恐縮です。
    当日は盛り上げてくださってありがとうございました。ミカールのお料理教室も決まったみたいで何よりです。ひやかし気分で参加しちゃおうかな。。。なんて考えています。
    これからも、素敵な商品を日本に紹介して下さいね。あとノルウェーを忘れないであげてください☆

  4. >>aokiさま
    その節はお世話になりました!ミカールさんをご紹介いただいてありがとうございました。お教室、時間が合えば是非参加してください!
    先生は初めての時は大抵とても緊張なさるので、そんなときにお知り合いがいれば随分と気持ちが楽になると思います。
    詳細が決まったら連絡しますね♪

コメントを残す

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る